阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で18日に開幕する第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に、7年ぶり11回目の出場が近づくさいたま市の浦和学院高校(石原正規校長)。夏春2季連続、かつ2021年秋から指揮を執る森大監督の下で初めての甲子園に、選手たちの士気は高い。
新監督が「超攻撃型野球」を掲げた浦和学院は21年秋、関東大会で4強入りを果たした。
大会後のテーマは「冬眠」とし、体作り▽脳の活性化▽メンタル強化―の三つに取り組んだ。伝統の朝練を原則廃止して睡眠の質量向上をはかり、小論文や読書感想文を書いて言語化能力を養うなど、次々に新しい挑戦も。選手の体格は一回り大きくなり、実戦練習も重ねて手応えを感じている。
初陣は18日の大会開幕戦、相手は大分舞鶴(大分)に決まった。新体制初の大舞台、大会初日の開幕試合と初めてが重なる一戦に向け、森監督は「まずは一勝。走攻守すべてにおいて前向きに、失敗を恐れずやってほしい」。21年夏の甲子園を経験した八谷晟歩主将は「監督が代わってプレースタイルも変わった。新しい浦学野球を見せたい」と力を込める。
全員野球で戦いたい 森大監督
父である、森士前監督からバトンを引き継ぎ、プレッシャーも感じておりましたが、新体制から甲子園という大舞台を経験させて頂ける事に感謝の気持ちでいっぱいです。ここまでこられたのは新たな取り組みに対して生徒たちが自分を信じてついてきてくれたおかげです。足りないところは多々ありますが、残り少ない時間でチームを仕上げていきたいと思います。今までの伝統ある浦学野球を継承し、新体制としてアップデートした新生浦和学院の姿を披露できるよう全員野球で戦いたいと思います。
目指すは全国制覇!記憶にも記録にも残る試合をしたいと思います。
日々成長、頼もしく 田中宏部長
7年ぶりの選抜大会に出場する事ができ、大変うれしく思います。これも応援してくださる野球ファンの方や地域の方々のご協力の賜物と大変感謝しております。生徒たちも支えてくれる人たちへの感謝の気持ちを忘れず、野球に取り組んでもらいたいと思います。
今年のチームは投手を中心とした守りからリズムを作るチームです。そこにこの冬取り組んできたものが合わさってどのようにチームが進化するのか、生徒が日々成長していく姿に頼もしさも感じます。残りの期間やり残しのないよう準備をしていきます。全員野球で生徒と共に全力で戦いたいと思います。
「ファミリー」に感謝 石原正規校長
この度、野球部の皆さんの努力が実り、第94回選抜高校野球大会に出場できることになりました。この誠に喜ばしくうれしい知らせを受けるにあたり、保護者の会並びに野球部父母会、同窓会並びに野球部OB会、後援会などの平素より本校野球部を応援してくださっている浦学ファミリーの皆様に、全校生徒と全教職員を代表して心より御礼申し上げる次第です。これまで、ありがとうございました。これからも、よろしくお願い申し上げます。
野球部の皆さんには、甲子園球場という大舞台で、浦学ファミリー全員の応援を背に受けて、本校伝統の「全員野球」を存分に展開していただきたいと思います。
優勝旗を目指して 大野元裕知事
出場、誠におめでとうございます。甲子園では埼玉県の代表としての誇りを胸に、紫紺の優勝旗を目指して、チーム一丸となり突き進んでください。734万県民の皆様とともに、ご活躍を心から応援しています。
2度目の全国制覇を 清水勇人さいたま市長
全国の強豪32校のうちの1校として選ばれた誇りを胸に、森大監督の新たな体制のもと、甲子園で浦学旋風を巻き起こしてください。春の選抜2度目の全国制覇を、133万さいたま市民とともに祈っています。
選手紹介
- 宮城誇南(3年)①173センチ②73キロ③左・左④読谷(沖縄県)⑤自分の投球でチームを勝利に導きたい
- 高山維月(3年)①180センチ②73キロ③右・左④春吉(福岡県)⑤どんなピンチでも投手を楽にできる捕手になりたい
- 鍋倉和弘(3年)①174センチ②92キロ③左・左④住吉(宮崎県)⑤先輩が持つ本塁打の大会記録3本を超えたい
- 大内碧真(3年)①173センチ②72キロ③右・左④西(富士見市)⑤恩師に活躍する姿を見せることで恩返ししたい
- 八谷晟歩(3年)①170センチ②75キロ③右・右④神埼(佐賀県)⑤新・浦和学院で名将がいるチームに勝ちたい
- 金田優太(3年)①181センチ②80キロ③右・左④芝西(川口市)⑤どの試合でもいつでも投げられるように、長打でもチームに貢献したい
- 喜屋武夢咲(2年)①175センチ②72キロ③左・左④松城(沖縄県)⑤勝負どころの一本で勝利に貢献したい
- 小林聖周(2年)①163センチ②65キロ③左・左④下貝塚(千葉県)⑤小さくてもこれだけできるんだと全国に見せたい
- 伊丹一博(3年)①180センチ②80キロ③右・右④宮原(さいたま市)⑤期待に応えられる4番打者になって甲子園に立ちたい
- 浅田康成(3年)①174センチ②77キロ③右・右④平洲(愛知県)⑤最高のパフォーマンスを。内角で打者が詰まるところを見てほしい
- 芳野大輝(3年)①177センチ②76キロ③左・左④西原(熊本県)⑤逆境でもチームに流れを持っていくピッチングをしたい
- 近内丈(3年)①182センチ②87キロ③右・右④矢吹(福島県)⑤一球一球を無駄にせず、ここぞという時に打てる打者になりたい
- 藤野航(3年)⑪173センチ②75キロ③右・右④山口(所沢市)⑤全国で選ばれたチームらしく戦い、強豪を倒して日本一になりたい
- 大勝朱恩(3年)①173センチ②74キロ③右・左④第二(新座市)⑤チームのためにできることを全力で
- 森塁(3年)①172センチ②78キロ③右・左④東浦和(さいたま市)⑤あと一本欲しいという場面で打てるようになりたい
- 西田稀士郎(3年)①183センチ②80キロ③左・左④柳南(福岡県)⑤先発でも抑えでも活躍できる投手になりたい
- 野口拓夢(3年)①171センチ②67キロ③右・左④葛飾(春日部市)⑤投げる時の覇気を見てほしい
- 江口英寿(2年)①163センチ②63キロ③右・右④飯塚鎮西(福岡県)⑤チャレンジ精神を忘れずに攻めていきたい
①身長 ②体重 ③投・打 ④出身中学校(市町村、県外は県名)⑤センバツへの抱負 ※学年は新学年 |
チーム一丸で勝利へ手応え
(投)2枚看板で
切れのある直球と繊細なコントロールで勝負する左腕エースの宮城誇南、遊撃手として堅実な守備や巧打も光る右腕の金田優太の2枚看板。ともに2021年夏の甲子園のマウンドを踏み、新チームで成長を遂げた。宮城は「課題だった安定感をつけるため」下半身の強化に尽力。金田は「どの試合でもいつでも投げられるよう」準備している。
緩急のある投球で打者を翻弄する左腕・芳野大輝も甲子園経験投手。最速142キロの「動く直球」で戦う右腕・浅田康成ら、層の厚さが強みだ。
(打)体幹を強化
切れ目のない打線が、21年秋の大会は持ち味を存分に発揮した。
主軸には強打者がそろう。関東大会で打順4番の鍋倉和弘は大会後、木製バットを振り込み、芯で球を捉える力がついた。コーチらの指導の下で体幹を強化し、バットをしならせるイメージを意識。体作りにも力を入れ、体重は約8キロ増加した。「体ができてボールが飛ぶようになった」と実感する。
関東大会1回戦で本塁打を放った高山維月や、県大会で4番を任された伊丹一博も長打力が光る。秋の公式戦で打率4割3分8厘を記録した投手兼遊撃手の二刀流、金田優太のほか、下位打線も好機に強く、冬を経て力を付けた姿に期待がかかる。
(守)「鉄壁」光る
バッテリーを含めた守備から試合のリズムを作る。中心は、21年夏の甲子園でもベンチに入り、森大監督も「鉄壁の守備」と評価する、二塁手・大内碧真、遊撃手・金田優太、三塁手・八谷晟歩―の3内野手ら。新チーム結成以来の公式戦8試合で失策3と、センバツ出場32校の中でも堅守が光る。
投手陣をリードするのは、中学時代は投手として活躍し、21年春から捕手に転じた高山維月。21年夏は控えでベンチ入り、新チームで正捕手となった。二塁送球に自信がある強肩、近内丈も控える。
秋季公式戦 対戦成績
県大会地区予選 | 代表決定戦 | ○ | 13-0 | 浦和工(5C) |
県大会 | 2回戦 | ○ | 10-0 | 熊谷工(6C) |
3回戦 | ○ | 不戦勝 | 狭山清陵 | |
準々決勝 | ○ | 12-7 | 大宮東 | |
準決勝 | ○ | 3-2 | 上尾 | |
決勝 | ○ | 10-2 | 花咲徳栄 | |
関東大会 | 1回戦 | ○ | 7-5 | 向上 |
準々決勝 | ○ | 5-0 | 桐生第一 | |
準決勝 | ● | 2-9(10) | 山梨学院 |
秋季公式戦 チーム成績
試合 | 打数 | 安打 | 二塁打 | 三塁打 | 本塁打 | 打点 |
8 | 244 | 86 | 17 | 9 | 1 | 55 |
三振 | 四死球 | 犠打飛 | 盗塁 | 失策 | 打率 | |
24 | 35 | 25 | 4 | 3 | .352 |
秋季公式戦 投手成績
投 | 試合 | 回 | 被安 | 三振 | 四死 | 失点 | 自責 | 防御率 | |
宮城 | 左 | 6 | 37 1/3 | 37 | 37 | 11 | 15 | 15 | 3.62 |
金田 | 右 | 4 | 19 2/3 | 17 | 11 | 12 | 9 | 7 | 3.20 |
芳野 | 左 | 3 | 2 2/3 | 1 | 4 | 4 | 0 | 0 | 0.00 |
渡辺 | 右 | 1 | 3 | 2 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0.00 |
浅田 | 右 | 1 | 1 | 2 | 0 | 1 | 1 | 1 | 9.00 |
西田 | 左 | 1 | 1/3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00 |
月野 | 右 | 1 | 2/3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0.00 |
野口 | 右 | 1 | 1 1/3 | 1 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0.00 |
秋季公式戦 個人成績
守 | 氏 名 | 学年 | 試合 | 打数 | 安打 | 打点 | 打率 |
投 | 宮城誇南 | 3 | 8 | 15 | 5 | 5 | .333 |
投 | 西田稀士郎 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | — |
投 | 野口拓夢 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | — |
投 | 浅田康成 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | — |
投 | 芳野大輝 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | — |
投 | 渡辺聡之介 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1.000 |
投 | 月野龍 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | — |
捕 | 高山維月 | 3 | 8 | 31 | 13 | 9 | .419 |
捕 | 近内丈 | 3 | – | – | – | – | — |
内 | 鍋倉和弘 | 3 | 8 | 24 | 9 | 3 | .375 |
内 | 大内碧真 | 3 | 8 | 26 | 8 | 3 | .308 |
内 | 八谷晟歩 | 3 | 7 | 25 | 6 | 6 | .240 |
内 | 金田優太 | 3 | 8 | 32 | 14 | 9 | .438 |
内 | 藤野航 | 3 | 5 | 11 | 5 | 4 | .455 |
内 | 大勝朱恩 | 3 | 6 | 10 | 6 | 4 | .600 |
内 | 森塁 | 3 | 7 | 6 | 2 | 1 | .333 |
内 | 當銘優太 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 | .000 |
外 | 小林聖周 | 2 | 6 | 5 | 2 | 1 | .400 |
外 | 伊丹一博 | 3 | 8 | 28 | 9 | 6 | .321 |
外 | 喜屋武夢咲 | 2 | 8 | 24 | 5 | 2 | .208 |
外 | 江口英寿 | 2 | 4 | 4 | 0 | 0 | .000 |
外 | 日高智陽 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | — |
(毎日新聞埼玉版)