【写真】1回のピンチで、左翼への飛球に飛び込んで好捕した三宅選手
甲子園球場(兵庫県西宮市)で行われている選抜高校野球大会第10日の30日、浦和学院(埼玉)は準決勝で、近江(滋賀)に延長サヨナラ負けし、優勝した2013年以来、9年ぶりの決勝進出はならなかった。上位打線の好打と投手陣の粘り強い投球で熱戦を展開。敗れはしたが、夏へ大きな自信をつかむ戦いぶりだった。
初めて立った甲子園の左翼の守備位置。三宅流架選手(3年)は「いつ出番が来てもいいように準備してきた。思い切ってプレーするだけ」と落ち着いていた。
見せ場はいきなりやってきた。一回二死二塁のピンチ、相手打者が放った飛球に猛然と前進し、飛び込みながらつかみ取った。相手の先取点を防ぐ好守に、スタンドから大きな拍手が聞こえてきた。
これまで自らのミスで敗れた練習試合もあるなど、守備には苦手意識を持っていた。この冬は、チーム全体できわどい打球を飛び込んで捕球する練習をこなし、自主練習も守備に時間を割いてきた。球際に強くなるため、ひたすら白球を追う日々を過ごした。
だが、甲子園で成果を発揮する場面はなかなか巡ってこなかった。この試合前まで、出場は和歌山東(和歌山)との2回戦での代走のみ。ほかの外野手が躍動する姿に悔しさが募った。「チャンスは必ずくる」と信じ、静かにそのときに備えてきた。
四回には、1点差に追い上げられ、なおも一死二塁で左中間の飛球を地面すれすれでキャッチ。何度もチームの危機を救った。「練習の成果を出せてよかった」。春につかんだ確かな手応えは、必ず夏につながっていく。
(読売新聞電子版)
初スタメン、ピンチ救う 三宅流架選手
四回裏、浦和学院は1点を返された。なおも1死二塁のピンチ。近江の6番打者・西川朔太郎選手(3年)が放った打球は、左中間を破ろうとしていた。
そこに飛びついたのは、初スタメンの左翼手・三宅流架選手(3年)だ。
50メートル6秒0の俊足で帽子を飛ばした。「捕れる」。地面すれすれですくい上げるようにつかんだ。「思い切り飛び込めた」。一回も、ダイビングキャッチでピンチを救った。
苦労を重ねた末につかんだスタメンだった。熊本の中学で2年生の時にひじを故障し、2度手術をした。熊本工の選手として選抜大会に出場経験のある父の正和さん(44)は「野球を続けられるかどうか」と心配したほどだった。
浦和学院に入学後も努力した。冬場の練習では5人のノッカーに際どい球を打ってもらい、飛び込む練習を繰り返した。甲子園初スタメンを言い渡されたのは準決勝の前日の練習後。「やってやるぞ」と意気込み、結果を出した。
三宅選手の好捕に象徴されるように、浦和学院は堅守を随所で見せた。今大会の4試合でチームの失策は1。チーム全員で対戦相手の打球方向を分析し、守備位置を細かく動かすなどの工夫もあった。「超攻撃型野球」だけでなく、守りからリズムをつかむ浦学野球が大舞台で輝いた。
(朝日新聞埼玉版)