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センバツV 最多本塁打の浦和学院OB・高田涼太が女子野球部を率いる理由

【写真】浦和学院高女子硬式野球部で指揮を執る高田涼太監督(左端)と選手たち。練習後のミーティングで笑顔を見せた=さいたま市で2026年3月19日

 高校野球の甲子園で本塁打を連発し、チームの初優勝に貢献したスラッガーが、女子野球界で新たな挑戦を始めた。栄光の陰にあった苦い経験を指導の原点に、汗を流している。

栄光の陰にあった主将交代を原点に

 春夏の甲子園に26回出場の浦和学院高(埼玉)は2025年春、女子の硬式野球部を発足させた。監督に就任したのが、同校3年時の13年選抜高校野球大会に4番打者として出場し、大会最多記録に並ぶ3本の本塁打をマークした高田涼太さん(30)だ。母校で女子選手たちとともにグラウンドに立つと、高校時代の苦楽を思い出す。

 埼玉県和光市出身。高校時代は2年の夏に三塁手として甲子園に初出場した。天理(奈良)との3回戦で敗退後、当時監督を務めていた森士(おさむ)さん(61)から「きちんと自分の意見を伝えられる性格」を買われ、新チームの主将に指名された。

 責任感が強く、負けず嫌い。「自分がチームを引っ張り、日本一にならなければいけないという使命感」から、ミスが出ると感情的になる時があった。特に好機で見逃し三振を喫したり、守備でベースカバーに入らなかったりする選手がいると厳しく指摘することが度々あった。

 チームは秋の県大会で準優勝し、秋季関東大会では3連覇を達成。結果は出ていたが、自身とチームメートとの間にわだかまりがあるのを感じていた。センバツを目指して練習していた12月上旬、森監督から呼ばれ、こう言われた。

 「主将を降りなさい。厳しいだけじゃ、人はついてこない」

 予想外の言葉に驚いた。しかし、自身の行動を振り返る転機にもなり、「言われる相手の身になっていなかった」と反省した。他の選手の話に耳を傾けることを意識し、チーム全体が勝利に向かう雰囲気を作ることがリーダーの役割だと感じた。

 「単に立場で物を言っても人は納得しない。言葉に説得力を持たせるには、それまでの姿や人間性が必要」。主将を降りてから学んだことだ。その後もチーム全体を見渡し、中心選手であり続けた。そして13年春のセンバツを迎え、決勝で済美(愛媛)を破って歓喜の瞬間を迎えることができた。

「やるからには負けないチームを」

打撃投手を務める浦和学院高女子硬式野球部の高田涼太監督。指導では「自分が動いて見本を見せる」ことも大切にしている

 高田監督は立教大を経て社会人野球のJFE西日本(広島)で4年間プレーした後、社業を経て、「地元で野球に関わる仕事がしたい」と埼玉に戻ることを決意した。24年1月に、森さんが理事長を務め、子どもたちに野球などのスポーツと学習の場を提供する特定非営利活動法人(NPO)のスタッフとなった。同時に浦和学院の学校職員にも就いた。

 森さんから女子野球部の監督就任を打診されたのは、着任早々の5月ごろのことだった。最初は戸惑った。女子野球の世界は未知だったからだ。しかし、調べるうちに全国規模の大会が年3回あることなどを知り、興味が湧いた。

 「ゼロからチームを作り、母校の力になることもできる」と監督を引き受けることを決めた。森さんには「やるからには負けないチームを作りたいです」と伝えた。

 今年3月、取材でさいたま市緑区にある学校グラウンドを訪れると、高田監督は打撃投手を務めていた。

 「ランナー三塁、ヒッティング」。さまざまな場面を声掛けし、変化球も交ぜて投げる。打つ際のバットの軌道も身ぶり手ぶりで助言した。

 練習を終えると、選手たちから「サングラスが似合っていますね」と言われ、はにかむ姿もあった。「真剣にやる時はやる。ふざける時はふざける」とメリハリを付けることを意識し、主将の吉田ゆあ選手(2年)は「練習を終えると、監督も私たちを笑わせようとしてきます」と語る。1年目の25年度は11人でスタートし、今春新入生約20人が入部する予定だ。

自身の野球経験も基に女子選手たちを指導する浦和学院高女子硬式野球部の高田涼太監督

 男子と比べて体力差はあるが、「野球が好き」という気持ちは変わらない。だから、これまでの自身の経験全てを注ぎ込むつもりだ。その上で、高校時代を振り返って改めて思う。

 「技術がうまくなって活躍してほしいと思っています。ただ、野球を通して学んでほしいことは相手を思いやる心と困っている人に気づくことのできる力です。将来、野球の技術以上に生きると思うからです」

 1年目に公式戦初勝利を挙げることはできたが、目標は創部3年目での全国大会制覇。再び「URAGAKU」のユニホームに袖を通し、後輩たちと歩く新しい野球人生はまだ始まったばかりだ。

(毎日新聞)

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