第91回全国高校野球選手権埼玉大会は10日、県営大宮球場で開会式が行われ、昨年より1チーム多い158チームが参加して開幕。約1万4000人の観衆が見守る中、2949人の選手が堂々と入場行進を行った。開会式後の開幕戦は、秩父が5-1で川口工を下した。決勝は29日正午から行われ、優勝校が全国高校野球選手権(8月8日から15日間・甲子園)に出場する。
晴れ舞台は、曇り空の下で幕を開けた。ライトからレフト方向に心地よい風が吹き、灰色の雲が「甲子園の銀傘」のように球場を覆う。照り返すような蒸し暑さの例年とはうって変わり、涼しさすら感じさせる開会式となった。
入場行進の先陣を切ったのは、春の県大会を制したAシード浦和学院。抽選順に次々と選手たちが入場し、しんがりは同準優勝の埼玉栄が務めた。全チームが勢ぞろいすると、緑の芝生上には色鮮やかな扇形が浮かび上がった。
選手宣誓は小鹿野の大森脩弘主将が行った。「青春をともにした仲間と、埼玉県のすべての方々が、感動し、夢を抱けるよう、元気にプレーします」と大会史上初めて、手話を交えて宣誓。熱戦を共有したいという思いが、ストレートに伝わる内容だった。
全国を目指し、熊谷中と浦和中が初めて関東大会に出場して以来、今年で88年目。登録人数も7286人までふくれ上がった。夏の甲子園出場4度の上尾の安保司主将は「応援してくれる人が多いのはまさに伝統の力」。5度出場した熊谷商の梶山和彦主将は「伝統という看板を背負って、誇りを持ってやりたい」と歴史の重さをかみしめる。
熱闘を支えるのはいつの時代も球児の情熱。今年も魂のぶつかり合いが始まった。
入場料金は、一般500円(中高生は200円)。引率された少年野球・中学生チーム(引率者・保護者有料)、障害者と介添え者1人、小学生以下は無料。
◇「気負いなくV4へ」 浦学
埼玉史上初の4連覇が懸かる浦和学院。158チームの先頭を堂々と行進し、王者の風格を漂わせた。主将の島津は偉業達成へ「先輩たちが積み重ねてきたもの。一戦必勝で、自分たちの力で行くことがまず大事」と気負った様子はない。
だが、3年連続出場も甲子園ではすべて初戦敗退と辛酸をなめた。昨年は4強入りした横浜に5-6と惜敗。唯一の経験者の島津は「今年こそは勝ちたい」。新チーム始動の昨秋の県大会では初戦敗退したものの、その後は調子を上げてきた。春は関東大会まで制して公式戦11連勝中だ。
豊富な投手陣を引っ張る左腕エース羽倉は「先発なら完投、継投ならきっちり抑えて強い気持ちで頑張る。チーム一丸でやっていきたい」と意欲を語った。
◇「仲間の言葉で前進」 菖蒲
学校統合で菖蒲は最後の夏を迎えた。12日の初戦でAシード浦和学院と対戦する。対戦相手が決まった瞬間、「頭が真っ白になった」と主将の三上。「練習しよう」。チームメートの一言がチームを動かした。2、3人で練習することもあったが、対戦相手が決まってから、チーム一丸となった。
「関東一の学校と対戦するのは奇跡。出身校がなくなるのは寂しいが、試合で菖蒲の名が広がるとうれしい」と笑顔を見せた。
(埼玉新聞)