「おれの思いを受け継いでくれ」。ベンチ入りできなかった親友の喜多大輔投手(2年)から手渡されたお守りを胸に、マウンドに登った。しかし、四回に3四球を与えるなど投球が崩れ、この回で降板した。
県大会では地区予選も含め3試合で完投。140キロ台の直球やカーブ、スライダーなど多彩な変化球を武器にチーム躍進の原動力となったが、今大会ではなぜか切れを欠いた。県大会後、試合に登板しない日が約1週間続いた。「その間に調子が狂い、自分の投球ができなくなった」
1日の1回戦は四回に2失点を喫し、五回降板。なんとか調子を取り戻そうと同夜、シャドーピッチングを繰り返した。が、伸びのある本来の球は最後まで取り戻せなかった。
試合後、「あいつに悪かったな」とつぶやいた。喜多投手は「今はただ、お疲れ様と言いたい」。そこには、厳しい練習を一緒に乗り越えてきた同級生ライバルへの思いやりがあふれていた。
(毎日新聞埼玉版)