◇成長の秋「平常心」で初完投 佐藤拓也投手 浦和学院1年
四回、安打を初めて許し、走者を背負った。その時、先輩の言葉がフッと頭に浮かんだ。「こういう時は慌てたら余計打たれる。平常心で行け」。大きく息を吐くと、得意の直球で内角を思い切り良く突き、後続をたちまち断った。
ここで崩れなかったことが、自信になった。終わってみれば零封で初完投。この秋に遊撃手から投手に転じたばかりとは思えないほどの出来栄えに、森士監督も「制球力とマウンド度胸がいい」と目を細めた。
夏の大会では出場の機会がなく、準決勝での敗北をベンチでぼう然と見つめた。先輩の無念の思いを、胸に刻んで臨んだ秋大会。引退した3年生たちはたびたび練習に顔を出し、投球フォームを見てくれた。ピンチに際しての心構えを説いた「平常心で行け」は、夏のエース・阿部良亮から聞かされた言葉だった。
優勝をかけた大一番。スタンドに陣取った阿部ら3年生の盛んな声援も、力になったと思っている。「関東大会は強気で攻める」。秋大会で、ひと回り大きく成長できたようだ。
(読売新聞埼玉版)
◇強気勝負、ピンチ乗り切る 浦和学院・佐藤投手 足腰鍛錬、球威増す
大きく息を吐いて、深呼吸した。0-0の同点で迎えた6回表2死三塁、浦和学院の先発右腕、佐藤拓也(1年)は自分を落ち着かせ、強気の勝負を挑んだ。「打者の懐を攻める」と内角へ直球を投げ込み、2番打者を詰まらせ遊ゴロに。ピンチを切り抜けた。
今夏の埼玉大会は野手としてベンチ入り。新チームになってから、中学以来の投手に戻った。前エースの阿部良亮君(3年)からアドバイスをもらった。「大事な場面で、内角の直球が投げられれば、打ち取り方のバリエーションが増えるはず」。球威を増すため、100メートルダッシュを繰り返し足腰を鍛えた。練習試合で安定した結果を残し、今大会では先発を任された。「持ち味は制球力とマウンド度胸。今日は堂々たる投球だった」と森士監督。
背番号は7。「関東大会でも強気に攻めて、自分の投球をしたい」。エースナンバー奪取と、来春の選抜大会出場を目指す。
(朝日新聞埼玉版)
◇一戦一勝、全力で--浦和学院・佐藤拓也投手(1年)
1年生ながらエースと先頭打者を担った。準決勝後「1番には慣れてるもんな」と森監督に声を掛けられ、恥ずかしそうに笑ったあどけない16歳。公式戦初完封で優勝を決めると、仲間から胴上げされた。
8月からバッテリーを組む森光司捕手(2年)は「弟みたいな後輩」と話す。愛される選手だが、マウンド上では最高135キロのストレートと制球のよさが武器。「勝負度胸があり大きな舞台にたっても人を頼らない」(森捕手)という。
茨城県鹿嶋市出身。球児だった父・勝美さんの影響で野球を始め、甲子園を目指して浦和学院の門をたたいた。「森先生についていけば甲子園に必ず行ける。関東大会でも一戦一勝で、目の前の試合を全力でぶつかりたい」と前を見据えた。
(毎日新聞埼玉版)
◇<ヒーロー>先輩の教え胸に全力投球 浦和学院(1年)佐藤拓也投手
強打を誇る春日部共栄打線をわずか2安打に抑え、優勝が決まると、チームメートが胴上げし宙に舞った。
新チームになってから「マウンド度胸と制球力が持ち味」(森士監督)と買われ、内野手から投手に転向。走り込みで下半身を鍛え、得意のストレートの球質が重みを増した。
そんな一年生投手を支えたのが、準決勝で敗退した夏の大会でエースを務めた三年の阿部良亮君。ほとんど毎日のように練習に付き添い、「内角を大胆に攻めると打ち取りやすくなる」「ピンチに動揺すると傷口が広がる」と説いた。
その教えが、今大会コールド勝ちが目立った春日部共栄の強打線にも生きた。「調子が良かった」と逃げることなくボールを投げ込み、四球もわずか一つだった。
この日は、打撃でも2本の適時打を放つ活躍。「先輩たちのためにも、やっぱり甲子園に行きたいです」と関東大会での活躍を誓った。
(東京新聞埼玉版)