【写真】太ももを高く上げて駆け出すナインら=浦和学院グラウンドで(毎日新聞埼玉版)
「あと5分」。中村要コーチ(37)から声がかかる。グラウンド脇にある食堂での夕飯。この後待っている室内トレーニングまでに全部食べきらなければならない。
選手らの1日の目標摂取カロリーは約6000キロ。野球選手としてバランスのとれた体形を目標に、厳しい練習でも体力が落ちないように1日3回体重測定する。選手ごとに「ご飯」の量が設定されている。
身長171センチで、体重64キロの林崎龍也捕手(1年)は、一日2350グラムのご飯がノルマだ。朝650、昼500、夜1200。茶わん大盛り一杯が約400グラム。
朝に食べ残したご飯をおにぎりにして持ち越すと、夜のノルマが食べられない。「食べるのがつらいこともあります。でも作ってくれた人に感謝しながら、一粒残らず食べています」
「練習で壊れた体の組織を食事で作り替える」と、安保隆示顧問(40)は話す。浅田龍一投手(2年)も「家族も、食事を準備してくれる人も、全て支えてくれる人たちに感謝している。恩返しするためにも、甲子園で結果を出したい」。
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「甲子園に行きたかったから選んだ」
選手たちは全国大会出場を目指して「浦学」に集まった。小林賢剛主将は「『ありがとう』を両親に伝えたい。甲子園で頑張る姿を見せたい」と語る。
沼田洸太郎内野手(2年)も「甲子園では両親に元気なプレーを見せたい。打撃コーチをしてくれた3年生の先輩にも感謝の気持ちを伝えたい」と話す。
1月28日。
センバツ出場決定が伝えられたグラウンドで、選手たちは喜びに浸る間もなくバッティング練習を始めた。竹製のバットで硬球をはじき返すため、しびれる手をグラウンドに備えられたストーブにかざす。
秋に購入したという手袋はどれも穴が開いてぼろぼろ。グラウンド脇の坂道では、他の選手が腰にロープで古タイヤをくくりつけ、ダッシュを繰り返した。
小林主将は言う。「センバツに出場させていただき感謝の気持ちでいっぱい。家族や学校の人、いろいろな人の支えがなかったらここまで来られなかった。全国制覇で恩返ししたい」
全国32校の頂点を目指し、大会は3月23日に阪神甲子園球場で開幕する。
(毎日新聞埼玉版)