【写真】秋季県大会準決勝で、聖望学園・川畑から逆転サヨナラ2ランを放つ浦和学院・佐藤。捕手高橋=2011年10月1日、県営大宮球場(埼玉新聞)
2年連続で選抜切符を獲得できたのも、この試合を乗り越えたからと言っても過言ではない。10月1日。関東大会出場を懸けた聖望学園との県大会準決勝は、負けてもおかしくない試合だった。
一回に1点先制された浦和学院はその裏、石橋の2点打ですぐさま逆転。しかし三回にあっさり追い付かれた。
先発涌本は二回のピンチで早くも降板し、打線も聖望学園の2番手、1年生川畑の強気の投球に苦しんだ。四回に3-2と勝ち越し、迎えた六回、無死三塁で追加点を奪えなかった。
すると七回、2番手渡邊剛が同点打を浴びた。その裏、今度は1死満塁で1点も奪えず、八回にはミスから失点し、ついに3-4と逆転されてしまった。
再三の好機で一本が出ない完全な負けパターン。14安打14残塁の拙攻で敗れた夏の大会の花咲徳栄戦が脳裏をよぎる。「試合中に勝てるイメージが全く湧いてこなかった」と森監督。試合は九回裏、最後の攻撃に入った。
追い込まれたチーム。しかし、選手たちは執念を見せた。先頭打者の1番竹村が三塁へしぶとく内野安打を放つと、敵失が絡み二塁へ。続く林崎が送りバントをきっちり決め1死三塁とした。
打席には3番佐藤。「何も考えず積極的にいこうと思った」と初球の直球を右翼席へたたき込んだ。鮮やかな逆転サヨナラ2ラン。劇的な勝利に喜びが爆発した。
ここぞの場面で本塁打を放った佐藤にすごさを感じる。だが、九回の守備を三者凡退に抑え、裏の攻撃に勢いをつけたのは、公式戦初登板の1年生山口。それに先頭打者として出塁した竹村、初球で犠打を決めた林崎。誰も試合を捨てていなかった。この大会で主将を務めた明石は、「絶対に負けたくなかった。この試合を通じて、諦めてはいけないということを学んだ」と振り返る。
「成功の反対は失敗ではない。諦めることだ。勝者は常に諦めない」。森監督がよく口にする言葉をナインは見事に体現した。
起死回生の聖望学園戦は、大きな財産になった。決勝では花咲徳栄に11-3で快勝。夏のリベンジを果たすとともに、3連覇を達成した。
(埼玉新聞)