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浦和学院、初戦快勝 高崎商に6-0 夏の大会8年ぶり白星

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【写真】試合に勝利し笑顔でベンチを後にする佐藤(中央)ら浦和学院ナイン。左は森監督=11日午前、甲子園球場(埼玉新聞)

 第94回全国高校野球選手権大会第4日は11日、兵庫県西宮市の甲子園球場で1回戦4試合を行い、4年ぶり11度目出場で今春の選抜大会8強の浦和学院は、高崎商(群馬)に6-0で快勝し、夏は2004年以来、8年ぶりの白星を飾った。浦和学院は大会第9日の16日、第1試合で3回戦進出を懸け、6年連続9度目出場の聖光学院(福島)と対戦する。

 五回まで互いに譲らず0-0の展開。均衡が破れたのは六回だった。それまでの足を絡めた攻撃がやっと実を結んだ。先頭の竹村が死球で出塁すると林崎が送り、佐藤は敬遠で1死一、二塁。山根の初球に二塁走者竹村がノーサインで三盗に成功しチャンスを広げた。ここで山根がきっちりセンターに犠飛を放ち、欲しかった先制点を奪った。

 すると続く笹川が内角の直球を見事にすくい上げ左翼席への豪快な2ラン。この回、わずか1安打で3点を奪い、試合の主導権をつかんだ。

 八回には笹川の中越え二塁打で1点、九回にも林崎の中前打、佐藤の右飛で2点を追加しダメを押した。10安打で6得点。終盤に持ち前の強力打線が力を発揮した。

 打線の援護にエース佐藤も尻上がりに調子を上げた。無失策の守備にも支えられ、終わってみれば被安打7ながら94球で、選抜大会の三重戦以来、甲子園で2度目の完封を飾った。

 4年ぶりに帰ってきた夏の甲子園で8年ぶりの1勝を挙げた森監督は「本当に選手たちがよくやってくれて、うれしい限りです」とお立ち台で満面の笑み。

 「佐藤は粘り強く投げ、バックもよく守った。選手が集中して試合に臨み、一体感もあった」と奮闘したナインに賛辞を送った。

 2回戦では昨年覇者の日大三(西東京)を破った聖光学院が相手。強豪には変わりないが、森監督初の3回戦進出へ、一戦必勝で臨む。

◇頼れる4番が殊勲の先制打 山根

 0-0の均衡を破ったのは伸び盛りの2年生の4番山根のバットだった。

 六回1死二塁から打席の佐藤が敬遠されたが「自分で勝負してくるだろう」と冷静だった。初球に二塁走者竹村が三盗し、一、三塁。「犠牲フライでいい」と腹を決めた。

 直後の2球目、狙っていた105キロのカーブをセンターへ。打球は高々と舞い上がり飛距離は十分で待望の先制点が入った。ボールの下をたたいた犠飛に「引っ掛けず、練習してきた通りにできた」と納得していた。

◇好守でけん引 チームに勢い 林崎

 攻守の要・林崎が九回に、高崎商の戦意を喪失させるには十分すぎる5点目の適時打を放った。

 三、七回の得点圏に走者を置いた場面で凡退していただけに、意気込んできた。「どうにかして佐藤につなぎたかった」。言葉通り、2ボールからの3球目を逆らわず、中前にはじき返した。

 女房役としても、立ち上がりが悪かった佐藤を好リードし、完封勝ちに貢献。「気持ちの部分が成長したと思う。苦しい中で、うまく投げられていた」と、エースに賛辞を贈っていた。

◇機動力野球で流れ呼び込む

 浦和学院が、昨秋以降から、より力を入れている機動力野球。その一端を見せ、4大会ぶりの夏の1勝をつかみ取った。

 一回からエンドランを使い、積極的に仕掛けるなど、高崎商の好左腕関を揺さぶる。五回には2度とも盗塁に失敗したが“足”を止めなかった。

 象徴していたのが0-0の六回、先制点を奪った場面だ。1死一、二塁から二塁走者竹村が「狙っていた」と完全にモーションを盗み、ノーサインで三盗。その次の球を打席の山根が、きっちりと中堅に犠飛を放った。

 森監督は「中盤以降、相手がへばってきたところをひるまずに突け、流れを呼び込めた」と満足そうに振り返った。

◇仲間に感謝の一発 笹川3安打3打点

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【写真】6回表浦和学院2死一塁、笹川が左越え2点本塁打を放つ(埼玉新聞)

 投のヒーローが佐藤なら、打では文句なしで5番の笹川。本塁打に2本の二塁打と、3安打3打点の大暴れだ。

 中でも圧巻は六回の試合を決定付けたアーチ。

 山根の中犠飛で1点を先制した直後、2死一塁で2ボール2ストライクから5球目だ。内角直球に長い腕をうまくたたんで完璧にすくった。大きな弧を描いた打球は、あっという間に左翼ポール際へ突き刺さる2ラン。「まさか入るとは思わなくて、うれしかった。チームに勢いを与える一本になった」。一塁ベースを回ると思わずガッツポーズも飛び出した。

 八回にもフェンス直撃の中越え二塁打でチームに4点目をもたらしたが、試合後の背番号9の口から飛び出したのは感謝の言葉だった。

 埼玉大会が迫った6月の練習試合で、二塁手の緑川と交錯して左手甲を骨折。予選には強行出場したものの、6試合で打率2割1分1厘、1打点と選抜で4番を打った男にとっては不本意でしかなかった。

 けがも無事に完治し、「チームに貢献できず、申し訳なかった。周りで協力してくれた方のためにも打ちたかった」。どこまでも謙虚な男だ。

◇重圧屈せず粘投 佐藤

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【写真】高崎商打線を7安打完封した佐藤(埼玉新聞)

 春とは違う真夏の甲子園。負けたら終わりという緊張感。チーム自体、夏の大会は2004年以来、白星がない。ましてや初戦。背番号1にかかる重圧は相当だったはずだ。

 だが、浦和学院エース佐藤はそんなことなどものともせず平然と完封した。やはりチームの中心に君臨するのは、この男だ。高崎商に7安打を浴びながらも要所を締め、スコアボードに“0”を九つ刻んだ。12日は18歳の誕生日。「現役として誕生日を迎えられて良かったです」。勝利の瞬間は、ニコリともしなかった右腕ははにかんだ。

 立ち上がりは不安定だった。四回までに5安打を放たれ毎回、得点圏に走者を背負った。特に三回は1死から連打で一、三塁のピンチ。それでも、相手の4番に対しスライダーを引っ掛けさせ、注文通り遊ゴロで併殺に切って取ると、打線にリズムが生まれた。

 0-0の六回、山根の犠飛で均衡を破ると、続く笹川が左翼席に貴重な2ラン。一塁走者として塁上にいた自身も「打った瞬間、いったなって。あの本塁打で楽になった」と感謝した。

 守備では無失策、攻撃でも六回以降に6得点と支えてくれた仲間の心意気に応えるのがエース。「中盤からは落ち着けた」と武器の緩急自在の投球が復活。終わってみれば94球の完封劇だった。

 ただ自身の投球内容には「出来は60点ぐらい。きょうはみんなのおかげ」と満足はしてない。「ずっと、この夏に全国優勝するためにやってきた」。真面目で寡黙な右腕が、最高の仲間と迎える日本一長い夏は、まだまだ序章にすぎない。

◇8年ぶり夏の校歌 「声かれるまで応援」

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【写真】野球部員が中心となり盛り上がるアルプススタンド=11日午前、甲子園球場(埼玉新聞)

 真っ赤に燃えたスタンドが歓喜に包まれた。11日、第94回全国高校野球選手権大会で4年ぶり11度目出場の浦和学院が第1試合に登場。佐藤拓也投手の力投と笹川晃平右翼手の2ランなどで、高崎商(群馬)に6-0で完封勝ちした。2004年以来、8年ぶりの夏の勝利に、足を運んだ約900人分の笑顔が三塁側アルプスに咲いた。

◇スタンド歓喜の大合唱

 学校からはバス14台が駆け付けた。出発したのは10日午後6時。約13時間の長旅にも試合前からスタンドは熱気に包まれていた。応援団長を務める西尾太志選手(3年)は「応援というより、選手を勝たせに来た。気を送りたい」と気合十分。3年生女子マネジャーの新城佳奈さん、杉田紗香さんは、「最後の夏に甲子園に連れてきてもらってうれしい。声がかれるまで応援します」と声をそろえた。

 記録員としてベンチで大声を張り上げる中島健太選手の母・真紀さん(47)は、5月から学生コーチになった息子の強い思いを感じていたという。「選手の時より甲子園へ出たい気持ちがより一層、強まったみたい。何とか長い夏にしてほしい」とにっこり。

 試合は0-0の六回、山根佑太左翼手の中犠飛で先制すると、続く笹川選手の左翼席への2ランでこの回に3点を先制。さらに八回に1点、九回にも2点を追加した。佐藤投手は竹村春樹遊撃手ら、無失策の守備にも助けられ見事な完封勝利。夏は8年ぶりとなる校歌が聖地・甲子園に響き渡り、選手とともにスタンドも大合唱だった。

 2ランを含む3安打3打点と大活躍した笹川選手の母・美加さん(40)は本塁打の場面を思い返し「一瞬、何が起こったのか分からなかった」と今でも信じられない様子。さらに実感を込めて、「皆さんの気持ちがあって一本出せたと思います。やっとチームに貢献できました」と試合後の笹川選手同様、周りの人への感謝の言葉を口にしていた。

◇「拓、最高のプレーを」 佐藤投手の姉・真美さん

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【写真】アルプス席で声援を送る佐藤投手の母・馨さん(右)と姉の真美さん(埼玉新聞)

 父母に交じり一際、グラウンドを心配そうに見つめる姿が―。佐藤拓也投手の姉・真美(まなみ)さん(24)。保育士の仕事は忙しいが、弟の晴れ姿を見ようと10日の最終新幹線で初めて甲子園に駆け付けた。

 立ち上がりから走者を背負う拓也投手。「胃が痛くなる」と苦笑いしていた真美さんだが、仲間の援護射撃があり「点数が入ってからは、いつもの拓のように柔らかくなった」と姉ならではの目線で安堵。甲子園で2度目の完封を飾った瞬間は、「おめでとう。『うちの弟です』って感じ」と、あふれ出るうれしさをこらえられない様子だった。

 拓也投手が甲子園出場を決めた7月28日、真美さんは県営大宮球場隣の氷川神社で絵馬に願いを込めた。

 「願いごと 拓也が甲子園でケガなく 最高のプレーができますように」

 あえて「全国制覇してほしい」と書かなかったのは、「3年間の全てを出せれば、優勝できると信じているから」。普段は顔を合わせることはできないが、弟思いの姉からの精いっぱいのエールだ。

(埼玉新聞)

◇OB左腕が一役

 高崎商の左腕投手対策に、浦和学院のOBが一役買った。昨年のエース左腕で上武大(群馬)1年の中山翔太さん(19)は6日から練習に参加し、打撃投手を務めた。中山さんはカーブなど変化球を中心に、後輩相手に投げ込んだ。「練習通りのスイングをしてもらえれば」。スタンドで試合を見守った中山さんの期待に応えるように打線は計10安打を放ち、相手投手を攻略した。「全国制覇に向けて気を引き締めてほしい」と笑顔でエールを送った。

(毎日新聞埼玉版)

■1回戦(8月11日)

浦和学院
000003012=6
000000000=0
高崎商

【浦】佐藤-林崎
【高】関、橘-中山

▽本塁打 笹川(浦)
▽二塁打 笹川2(浦)冨沢(高)

【浦和学院】
⑥竹 村3-1-0
②林 崎4-1-1
①佐 藤3-2-1
⑦山 根3-1-1
⑨笹 川5-3-3
⑧西 岡3-0-0
③明 石3-1-0
⑤高 田2-0-0
④緑 川3-1-0

(打数-安打-打点)

安 打:浦10、高7
失 策:浦0、高3
三 振:浦2、高3
四死球:浦6、高3
盗 塁:浦2、高0
犠 打:浦6、高2
併 殺:浦1、高2
残 塁:浦8、高9

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