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浦学1年生エース 高校野球新勢力図を探る 秋季地区大会総括

 来年3月22日に開幕する第85回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場校を選考する際の重要な資料となる秋季地区大会が終了した。各地区優勝校が参加した明治神宮大会・高校の部も仙台育英(宮城)の初優勝で閉幕。各地区の戦いぶりを振り返り、高校球界の新勢力図を探る。

◇積極的な打線、仙台育英初V 明治神宮大会

 仙台育英が強打で勝ち上がり、初優勝を手にした。好球必打に徹する積極的な打線は、決勝の関西戦で7連打を放つなど爆発力があった。

 準優勝の関西はエース左腕・児山が持ち前の制球力を披露し、打線もここ一番での勝負強さが光った。ベスト4には、昨年に続いて準決勝進出を果たした北照と、初出場ながら健闘した春江工が入った。

 1回戦で敗れたが、高知の4番・和田恋、京都翔英の投打の柱・榎本ら将来性豊かな選手も多かった。

<1>北海道

◇北照、総合力で圧倒

 北照が2年連続5回目の優勝を果たした。9人がセンバツに出場。総合力で他校を上回った。チーム打率は3割7分3厘。下位までスイングが鋭く、3番・吉田ら中軸に勝負強い打者が並んだ。エース左腕・大串はチェンジアップやツーシームなど多彩な変化球が持ち味。4試合で2失策と堅守も光った。

 準優勝の駒大苫小牧は準決勝までの3試合を逆転で勝ち上がった。右腕の吉尾は落ちる球を効果的に使い、全4試合に登板。捕手の高橋一を中心にまとまりもいい。攻撃は4試合で計10盗塁と機動力を発揮した。

 北海は3試合でチーム打率4割1分1厘。レギュラーに1年生が多く、今後の成長が楽しみだ。遠軽は2回戦と準々決勝を逆転勝ち。粘り強い戦いぶりが印象に残った。札幌日大や北見北斗もバランスのいいチームだった。

<2>東北

◇仙台育英、誇る投打

 仙台育英は今夏の甲子園経験者4人が残り、チームは高い完成度を誇る。2本塁打の上林は主将で4番。広角に打ち分けられ、勝負強さも併せ持つ。投手の軸は鈴木、馬場の両右腕。ともに完投能力を備え、緩急付けた投球に安定感がある。

 聖光学院の1年生左腕・石井は、準決勝まで1完封を含む3連続完投。速球は130キロ前後だが、多彩な変化球を内外角にきっちり制球する。厳しくマークされた主砲の園部は決勝で3安打を放ち、実力をうかがわせた。

 盛岡大付は1年生の松本が投打の柱。攻撃力が持ち味だが、3試合で9失策の守備力向上が課題だろう。準決勝でコールド負けした酒田南は、投手力の底上げが鍵となる。

 右サイドから切れのある球を投げ込む高橋凌ら3投手を擁する山形中央や、大館工など公立勢の健闘も光った。

<3>関東

◇浦学、1年生エース

 浦和学院は1年生左腕・小島(おじま)が全4試合に登板。低めに球を集めて打たせて取る投球は安定感抜群だった。打線も竹村、山根、高田ら今夏の甲子園経験者が多く残り、振りが鋭かった。

 花咲徳栄のエース右腕・関口は制球に課題を残したが、球威は大会ナンバーワン。野手では4番・捕手の若月が2本塁打と強肩で、強い印象を残した。

 常総学院は右腕・飯田が2試合連続完投勝ち。4番・内田が不調だったが、3番・高島は2本塁打を放った。宇都宮商は犠打を多用する手堅い攻撃が身上。小刻みな継投策も功を奏した。

 前橋育英は187センチの1年生右腕・高橋光が将来性を感じさせ、霞ケ浦は164センチの1年生左腕・上野が完成度の高い投球を披露。東海大甲府・渡辺と東海大相模・遠藤のスイングの速さは際立っていた。

<4>東京

◇堅守光る、安田学園

 安田学園は3回戦から決勝まで4試合連続無失策。この間を1人で投げた右腕・大金を中心に、堅実な守備が光った。大金は準々決勝の佼成学園戦で七回参考ながら無安打無得点試合を達成。しっかり腕を振って前で離せた時の速球には威力があり、低めへのスライダーも決定力がある。

 打線は決勝でセーフティースクイズで先制するなど、バントを効果的に使った攻めが特徴的だ。主将で1番を打つ渋谷をはじめ、下位まで粘り強い。

 早稲田実は、夏に腰を故障した左腕・二山を、1年生左腕・西山らがよくカバーした。3試合に登板した二山は、チェンジアップやカーブを生かしたテンポの良い投球に潜在力を感じさせた。打線は4番・熊田を軸に力強く、下位では捕手の利光が長打力を秘める。

 創価、日体荏原は、粘り強く接戦を勝ち上がった。

<5>北信越

◇フレッシュ、春江工

 春秋を通じて初めて地区大会に進出した春江工は、4試合全て2点差以内の勝利。全試合完投の右腕・坪田と1年生捕手・栗原がチームを引っ張った。坪田は1試合(9回)平均の与四死球が2・5個と安定感がある。栗原は、スピードと正確さを備えた送球が目を引く。4番としては毎試合安打で打率6割超をマークした。

 敦賀気比は主将で捕手の喜多ら今春のセンバツ経験者が中心。わずか3安打だった準決勝の上田西戦では犠打を絡めて活路を開き、最後は相手守備の乱れを突いて延長戦を制した。右腕・岸本はスリークオーターからの速球に伸びがある。

 上田西は、浦野、花里の両左腕が軸。俊足で長打力もある1番・武田を突破口に積極的な攻撃も目立つ。新潟明訓は、村山、漆原の両右腕ら1年生が活躍し成長の可能性を感じさせた。

<6>東海

◇県岐阜商、頼れる左

 県岐阜商が51年ぶりに優勝した。左腕・藤田は、新チームになってからフォームを修正し、制球が安定した。3試合で27奪三振。父の藤田監督は「(エースの)役割を与えたら、自覚が増した」と評価する。チーム打率は3割5分1厘。上位から下位までまんべんなくつながる打線が特徴で、つなぎの意識も徹底されている。

 準優勝の菰野は打線が好調だった。準々決勝と準決勝は七回コールド勝ち。左腕・山中はリズム良く打たせて取るタイプで、安定感があった。

 常葉菊川は粘り強さが持ち味。大垣日大、東邦という実力校に競り勝ち、県岐阜商とも接戦を繰り広げた。市岐阜商は越渡が3試合を投げ抜き、4強入りの原動力になった。

 準々決勝で敗退したチームでは、上位打線に長打力がある東邦の打力が目立った。

<7>近畿

◇京都翔英、粘り強く

 京都翔英は、2度の延長戦を含む4試合すべてが2点差以内の勝利。接戦での粘り強さが際立った。エースで4番の榎本がけん引役。防御率は0・77で、1本塁打を含む5割超の打率を残した。報徳学園は右腕・乾を軸とした堅い守りが目を引いた。また、大阪桐蔭、大商大堺に連続コールド勝ちするなど、打線には勝負強さがあった。

 大阪桐蔭、龍谷大平安も総合力で引けを取らない。大阪桐蔭は主将の森友、笠松ら甲子園春夏連覇のメンバーが残り、強打を引き継ぐが、経験不足の投手陣に課題を残す。龍谷大平安は投打にバランスが取れている。

 8強では守りに安定感がある履正社がまとまっていた。大和広陵は1年生エース・立田の制球の良さが目立った。天理は投手陣に安定感が増せば面白い。大商大堺は投手力が課題。

<8>中国

◇関西、打率4割3厘

 関西は、1番・逢沢や4番・土井ら1年生が攻撃の中心になった。17打数9安打の逢沢は、5盗塁と足でもけん引。土井も逆方向への鋭い打撃で、「つなぎの4番」として役割を果たした。チーム打率は4割3厘。投手では、4試合を1人で投げ抜いた左腕・児山の制球力が光った。

 広陵は本格派右腕・下石が投打にチームを引っ張った。直球は140キロ台前半。準決勝では、13奪三振で完封し、打ってはソロ本塁打とセンスを見せた。3番・太田、5番・永谷にも長打力がある。

 岩国商では高橋が印象に残った。最速137キロの左腕は3試合を1人で投げ、防御率0・69。岩国は小技を使った攻撃が持ち味。1年生右腕・東は変化球を駆使して好投した。崇徳は機動力を絡めた攻撃で8強入り。倉敷商は準々決勝で関西を追い上げた集中打が光った。

<9>四国

◇高知、打線にパワー

 高知は打線に力強さがあった。3番・市川、4番・和田恋を中心にチーム打率3割7分1厘。和田恋は決勝で同点本塁打を放つなど勝負強さを示した。投手陣は坂本優、和田恋、1年生・酒井の右腕3枚。準決勝、決勝で計5失策した守備陣は整備が必要だ。

 鳴門も攻撃型のチーム。河野、伊勢、稲岡のクリーンアップはパンチ力がある。足を使った攻撃も仕掛けられ、得点力が高い。

 済美は、1年生の大型右腕・安楽が光った。186センチ、90キロ近い体から繰り出す速球は最速151キロ。準決勝の鳴門戦で8連続を含む15三振を奪うなど将来性は十分だ。

 徳島商は攻守にまとまりがあるが、右腕・坂本が準決勝で大崩れしたのが痛かった。

 池田は渡辺、名西の両1年生右腕が楽しみ。英明は1年生左腕・赤川が面白い。

<10>九州

◇2枚看板、沖縄尚学

 沖縄尚学は攻守にまとまっている。投手陣は左腕・比嘉、右腕・宇良の「2枚看板」。ともに制球力があり4試合で5失点と計算できる。チーム打率は3割1分。下位まで切れ目なく、4番・柴引の勝負強さが光る。

 済々黌は今夏の甲子園を経験した左腕・大竹が投打の軸。4試合を1人で投げ抜き防御率0・79。打っても4割6分7厘の打率を残した。すきのない走塁と計16犠打という手堅い攻めが持ち味だ。

 2年連続4強の創成館は1年時からエースの右腕・大野が成長した。鋭いスライダーとカーブを武器に3試合連続完封。打線に安定感がほしいところだ。

 尚志館は集中打が持ち味。走塁面と計9失策を記録した守備の改善が課題となる。熊本工は左腕・山下に安定感があり、宮崎日大の188センチ左腕・甲斐翼は将来性を感じさせた。

(毎日新聞)

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