【写真】「甲子園で早く試合がしたい。楽しみ」と目を輝かせる贄隼斗(埼玉新聞)
贄(にえ)。「親戚にしか会ったことがない」というぐらい珍しい名字。だがプレーは至って堅実で、甲子園への意気込みも「全てで粘り強さを見せたい」と控えめだ。
昨秋は公式戦全13試合に二塁手としてスタメン出場。打順は2、9番を担い、個と個を連結させ“線”にする重要な仕事を全うした。犠打はチーム一の九つ、喫した三振も50打席でわずか1。決して目立たないが、こういう選手がいるからこそチームは成り立つ。
そんな“いぶし銀”も昨夏までは、甲子園が近いようで遠かった。
昨年の選抜大会は前年の関東大会まで16番を背負いながらも、あと1枠のところで漏れた。夏も念願かなわず、いずれもサポートメンバーとして黙々と裏方に徹し、チームの躍進を支えた。
静岡出身で寮生活を送る。早朝は課題とする球際の強さを求めて4時40分から捕り込み。全体練習後は少しでも練習時間を確保するため、早く食事を済ませ自主練に汗を流す。「いつも大きな大会ではメンバーに入れなくて。でも同じ学年のメンバーが活躍していて、負けてられない」。2度の悔しさが今の自分を奮い立たせる原動力だ。
ここに興味深いデータがある。地区、県大会では2割3分8厘だった贄の打率が、関東大会は3割8厘、神宮大会では驚異の6割6分7厘。森監督も「チームで一番の努力家」と評する実直な男は、大舞台になればなるほど本領を発揮しそうな未知の魅力を秘めている。
(埼玉新聞)