【写真】練習中、森監督の指示を聞くエース小島(左端)4番高田(右端)ら浦和学院ナイン=同校グラウンド(埼玉新聞)
選抜大会優勝校。浦和学院には必ずこの冠が付いて回る。しかも選抜以降も公式戦で1度も負けておらず、14連勝。県勢の悲願、深紅の大優勝旗を今年こそ埼玉に。周囲の期待が今まで以上に大きいのは当然だ。
勝ち続けて集大成の大会を迎えるのは、選手はもちろんのこと、22度目の夏に挑む森監督にとっても未知の領域だ。「果てしないプレッシャーだろうね。試合が近づけば近づくほど、感じてくるんじゃないかな」
過去、浦和学院は敗戦の屈辱を反骨心に変え、個の能力、チーム力を何倍にも増幅させてきた。だが今回は逆。森監督は「負けた悔しさより、勝ち続けたいという貪欲さが上回れるかどうか」と強調。4番高田も「相手の気迫をさらに超せるだけのエネルギーを出す。勝ちたい意欲を夏のステージで発揮したい」と気合が満ちる。
「一戦必勝」。森監督や選手からよく発せられる浦和学院を象徴する言葉だ。だが今回ほど重みを帯びている大会は今までにない。“優勝”の2文字よりも目の前の1勝、さらに自分たち自身に勝たなければならない。
夏の暑さ、負けたら終わりの重圧、日増しに高まる注目度。「打倒ウラガク」を掲げ、闘志をむき出しにする155チームのライバルたち。ワンプレーで変わる球場の雰囲気。他チームに比べ、圧倒的に準備期間は短いが、時間は待ってくれない。
日本一のチームと言えど、激戦の埼玉大会を勝ち抜き再び聖地に戻るのは簡単ではない。森監督は「それら全てを背負って戦える覚悟を決められるかどうか」と鋭い視線を選手に送り、主将の山根も「夏はウラガクでやってきた2年数カ月の集大成をぶつける大会。チームが一つとなり、一戦ずつ勝って優勝をつかみ取りたい」と決意を固くする。
5月の春季関東大会優勝後、グラウンドには再びもがき苦しんでいる選手たちの姿があった。
6月の神奈川遠征では東海大相模に連敗すると、関東大会8強の桐蔭学園には1試合目が1安打零封負け、2試合目も1-11で五回コールド負けを喫した。「夏に向けてチームをつくってきた相手と戦い、自分たちの力のなさを実感しました」と山根。今月1日には桐光学園(神奈川)の“ドクターK”左腕松井に毎回の18三振を奪われ、1安打無得点に封じられた。
プロ注目の松井が絶好調だったことを差し引いても、この試合でも見られたように、チームの和や一球に食らい付く姿勢が本来のものではなかった。練習中もプレーを中断して選手同士で喝を入れ合う場面も少なくない。
それでも浦和学院は立ち止まらない。これまでもそうだった。ナインには、幾多の試練と困難を乗り越えてきた負けん気とたくましさがある。
史上初の4季連続甲子園、そしてその先にある大いなる目標へ。最大の挑戦が今、幕を開けようとしている。
(埼玉新聞)