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浦和学院、花咲徳栄を7-2で破り2年ぶり15度目甲子園へ 三井3安打3打点、渡邉が好救援

【写真】優勝し胴上げされる浦和学院・森監督

 第105回全国高校野球選手権記念埼玉大会は28日、県営大宮球場で決勝を行い、Aシード浦和学院が7-2でDシード花咲徳栄に快勝し、2年ぶり15度目の優勝と甲子園出場を決めた。

 浦和学院は、同点の四回に2死満塁から3番喜屋武が放った2点勝ち越しの適時二塁打が決勝点となった。投げては4人の継投で2失点にまとめた。

 優勝した浦和学院は、全国高校野球選手権大会(8月6~22日・甲子園)で県勢として6年ぶり2度目の深紅の大優勝旗を目指す。

浦和学院、「超速攻」の理想体現 多彩な攻めで圧倒

4回表浦和学院2死満塁、喜屋武が右前に勝ち越しの2点適時打を放つ。捕手柴田

 強固な打線を形成した浦和学院が、圧倒的打力で勝ち上がってきた花咲徳栄を圧倒し、2年ぶり15度目の頂点に立った。集中打あり、小技ありの多彩な攻めで相手に重圧を与え続けた。森監督は「チャンスメークして、みんなで線になって点数が取れた」と選手たちのプレーをたたえた。

 理想とする攻撃の形を四回に示した。石田の内野安打を起点に、江口の犠打などで2死満塁。3番喜屋武の右前打で2点を勝ち越すと、1年の4番西田、2年の5番三井も続き、クリーンアップの3連続適時打で一挙4点。指揮官は「あれ(四回の攻撃)が全て。2アウトから点数が取れたのはすごく大きい」と、一体となった攻撃を評価した。

 投手陣も個々が役割を全う。登板した4人が持ち味を発揮した投球で、強打の花咲徳栄打線をわずか2失点に抑えた。「振ってくるのは分かっていた。真っすぐを見せつつ変化球で的を絞らせないようにした」と捕手篠塚。五回を除き毎回安打を許しながら、要所を締めたことで徐々に試合の流れをつかんだ。

 大会は全7試合で先取点を奪い、一度も追い越されることはなかった。指揮官が掲げるのは、全員が機動力と状況に応じた打撃で積極的に仕掛ける「超速攻野球」。先手必勝の戦い方を選手たちが体現したことで勝利を重ねた。

 準々決勝前日の24日、10年間同校のコーチを務めた三浦貴さんが帰らぬ人となった。選手たちは準々決勝後に悲報を耳にした。1番を打つ小林は「まず勝って甲子園に行くこと。それが一番の恩返し」と心に決め、準決勝と決勝を戦った。

一丸の思い、大粒の涙

森大監督を胴上げする浦和学院の選手たち

 燃えるような赤色で埋め尽くされた三塁側スタンドが歓喜に沸いた。Aシード浦和学院が2年ぶりに夏の王座を奪還。夏、15度目となる聖地への切符を手にした。

 就任2年目で初めて夏の甲子園出場を決めた森監督は「生徒たちに本当に感謝したい。44期生(3年生)は去年の夏の決勝で負けを経験してずっと悔しい思いをしてきた。全員野球ができるのが長所で、きょうは全員でつかんだ勝利」と大粒のうれし涙を流しながら選手たちをたたえた。

 県内4季連続優勝の実績と自信を手に挑んだ昨夏は、決勝で聖望学園に0-1と完封負け。「あの負けの後はなかなか思いが結びつかなかった。でも最後は夏。あの聖望戦があったから今がある」と森監督は悔しさを胸に、この夏に懸けた。

 現チームは秋、春と決勝で昌平に屈し3季連続で準優勝と、頂点まであと1勝が続いていた。だが春季関東大会で、選抜大会8強の専大松戸(千葉)から八回までリードを奪うなど、大一番に向けて着実に成長を遂げていた。

 「最弱の世代として始まったチームだった。全員でやらないと勝てない」と1番を打つ小林。指揮官の「今年は全員がエースで、主軸で、中心選手」という言葉の通り、投手を中心に守備の整備を重点的に行い、打順を積極的に入れ替えながら攻撃の活性化を図るなど、チーム一丸で夏に照準を合わせてきた。

 今夏、選手たちの思いが一つになった。つながりが生まれた打線は7試合で81安打66得点を記録。エース伊藤が不調で登板機会が減る中で、投手陣は左腕鈴木を軸にわずか5失点。圧倒的な攻撃力と安定感を誇る投手陣がうまくかみ合い、頂点まで駆け上がった。

 優勝を決めたナインは、マウンドで歓喜の輪をつくり、試合後に何度も抱き合って健闘をたたえ合った。「胴上げが下手すぎるよ」。言葉とは裏腹に、夏の県営大宮で初めて宙に舞った森監督は笑顔であふれていた。

喜屋武、主導権握る殊勲打

 決勝打を放った殊勲の3番喜屋武は優勝決定の瞬間、ライトから全力疾走でマウンド上へ向かい、「つらく苦しい練習が報われた。本当にうれしい」と歓喜の輪で喜びを爆発させた。

 主導権がどちらに転ぶか分からない1-1の同点で迎えた四回2死満塁。打席に立った喜屋武は、真ん中高めに来た狙い球のストレートを思い切り振り抜くと、打球は右前へ。打った瞬間「よし抜けた」と確信する値千金の勝ち越し2点適時打。「序盤でチームに勢いを与えられた」と背番号9は笑顔で振り返った。

 3年生の一打が浦学打線に勢いを与えた。続く1年生の4番西田、2年生の5番三井も連続適時打。面白いように主軸がつながり、この回4得点。序盤で勝利の女神を味方につけた。2死から3~5番の3連続適時打に森大監督も「2アウトから点を取れたことが本当に大きかった」と評価。「線になって打てた」と理想的な攻撃をたたえた。

 出身の沖縄を離れて浦和学院に入学したのは、中学時代に森士前監督から声をかけられたことがきっかけだった。当時は同じ沖縄出身の宮城誇南投手(早大)がチームで活躍していた。「自分の力がどれくらい通用するか試したい」。同郷の先輩と切磋琢磨し、今大会は主軸へ成長。貴重な一打で見事に埼玉の頂点をつかみ取った。

 さあ2022年選抜大会以来となる自身2度目の甲子園だ。今回の甲子園は意味合いが違う。前回は「先輩に連れて行ってもらった大会」、今回は「自分が中心になる大会。甲子園で成長した姿を見せる」と意気込む。聖地でも主役の座は渡さない。

ピンチも臆さず 鈴木1失点好投

3回を投げて1失点と好投した浦和学院の先発鈴木

 森監督から「実質エース」と評される鈴木が、決勝マウンドでも重要な序盤に1失点と好投。「1イニング1イニング死ぬ気で抑えよう」とマウンドに向かった。

 一回に迎えた1死一、三塁のピンチにも臆さなかった。「初回に満塁のチャンスで点が取れず、流れを渡してしまった」と感じていた。花咲徳栄で攻撃の鍵を握る4番小野、5番増田と対峙。選んだのは得意の直球での真っ向勝負。「4番は真っすぐで詰まらせて、5番も真っすぐで押し切る」と、理想通り捕邪飛と三振を奪い、無失点で乗り切った。

 今大会は、これまでエースを務めてきた伊藤に代わり先発する機会が多く、大車輪の活躍。「秋、春と伊藤に頼り切ってしまった部分があった」。次は自分の番だとベストボールを投げ続けた。スピードが出ない分、コースを意識した制球で「打たせて取る」を意識し、大舞台でも勝利への流れをつくった。

 春にベンチを外れた屈辱も鈴木を強くした。「スタンドで悔しい思いをした。夏に活躍したいと強く思った」。甲子園に臨む背番号19は「自分の結果よりもチームのために、とにかく楽しんで、全員野球で一生懸命に戦う」と力を込めた。

浦和学院・三井、自画自賛の先制打

3回表浦和学院2死二塁、三井が先制の右前適時打を放つ

 2年生三井が3本の適時打で3打点。特に三回2死二塁から、0-0の均衡を破る右前先制打は「手首使って、低めフォークをうまく拾えた」と自画自賛の一打だ。

 四回にはチーム5点目、六回には勝利をぐっと引き付ける貴重な7点目をたたき出した。大舞台での大仕事に「調子も上向きでチームに勢いをつけられた」満足げに話した。好調故に徳栄投手陣から厳しい攻めを受けて2死球。裏を返せば認められた強打者の証しだ。背番号15は「甲子園でも打ちたい」と活躍を誓った。

1年生4番の西田、頼もしい気合の一打

 1年生ながら強力打線の4番を任されている西田が、2打点と期待に応えた。一、三回には好機で打席が回ってきたが「球場の雰囲気にのまれて、初回、三回と悔しい思いをした」といずれも凡退した。

 悔しさを晴らす場面は四回の2死一、三塁で回ってきた。「絶対に打ってやろうと打席に入った」と気合の一振りは待望の中前適時打。六回にも内野ゴロで1打点を挙げた。「1年生として出させてもらっている。甲子園の雰囲気を楽しんできたい」と4番のプレッシャーと向き合う頼もしさを見せた。

浦和学院主将の江口、チームをけん引

 主将の9番江口が1安打、2犠打でチームに貢献した。守りでは九回2死一、二塁、中堅に飛んだ打球を捕球。ウイニングボールを手に仲間が集まるマウンドへ走り、「実感が湧かない。あっという間に終わった」とほほ笑んだ。

 3月、急きょ主将を任された。当初、不安もあったが「小林と二人三脚で信頼し合ってやった」と引っ張ってきた。昨春以来の甲子園。前回は帯同メンバーで「同級生がプレーしていて悔しかった」。最高の思い出にするために聖地へ挑む。

花咲徳栄、絶好機逸が分岐点に 先手奪われ流れ失う

 花咲徳栄が4年ぶりの夏制覇まであと1勝に迫ったが、宿敵浦和学院に屈した。岩井監督は「埼玉の準決、決勝を勝ち抜くにはよほどのタフさと運がなければ駄目」と、3時間半を超える準決勝の激闘から中1日で迎えた頂上決戦で、投打ともに力を出し切れなかった。

 五回を除く毎回の13安打を放ちながら10残塁。安打数では相手を上回りながら打線のつながりを欠いた。一回1死一、三塁から中軸が倒れ、二回1死一塁では併殺に倒れ、先制機を逸した。準決勝までの6試合で打率4割超えの4番小野は「相手のマークがきつかった」と内外を厳しく攻められ、好機で凡退した。

 1点を追う三回には無死一、三塁から得点は生田目の犠飛による1点のみ。得意とする先手を相手に取られ、反撃も同点止まり。直後に4点差とされると後手に回った。

 互いに満塁の場面をつくった六回の攻防が明暗を分けた。2死球などで得た好機から確実に2点挙げた相手に対し、花咲徳栄は3安打を放ちながら無得点に終わった。岩井監督は「だらしないところが出てしまった」と勝敗の分かれ目として挙げた。

 3番手として登板した上原が、七回以降無安打に抑え、味方の反撃を促す。九回、先頭の7番柴田、途中出場の目黒の安打で1死一、三塁とし、生田目の適時打で1点を返したが、反撃もここまで。最後まで継投でつないだ相手投手陣を打ち崩せずに終わった。

 昨秋は県2回戦、今春は県3回戦で敗れたチームが、今夏、70得点を挙げた。岩井監督は「沈みかけたチームをよくここまで持ってきてくれた。頑張りに感謝したい」とチームをたたえた。

4年ぶり声援 新鋭快進撃 大会を振り返って

 4年ぶりにコロナ禍前の様式で登録選手20人が全員参加の開会式が行われ、制限なしの応援でスタンドが盛り上がった今大会は、Aシード浦和学院が頂点に立ち、12日間の熱い戦いに幕が下ろされた。

 2年ぶり15度目の栄冠に輝いた浦和学院は、決勝まで7試合で81安打66得点を記録し、防御率0・69と圧倒的な強さを誇った。長年ともに埼玉の高校野球をけん引してきた花咲徳栄を退けての優勝は、価値ある1勝となった。

 花咲徳栄は4年ぶりの王座奪還を果たせなかった。だが、増田、斉藤、柴田ら3年を中心に夏に仕上げてきたのはさすがだ。打線をけん引した2番生田目、3番石塚に、決勝で3回2/3を好投した上原ら2年も奮闘しただけに秋以降が楽しみだ。

 今季県内公式戦15連勝中だった昌平は3季続けての制覇と悲願の甲子園初出場の夢には届かなかったが、花咲徳栄との準決勝では3時間35分に及ぶ激闘で1点差の好ゲームを演じ、スタンドを沸かせた。ノーシードから4強入りを決めた川越東は、山村学園、春日部共栄などの強豪を破り、ロースコアの試合を制する粘り強さで快進撃を見せた。

 細田学園が2014年の創部以来初の16強に進出し、16校の半数に公立勢が食い込んだ。秀明英光が右腕小川の完投で大宮東を下し12年ぶり、春日部東は4-3で市川越に競り勝ち14年ぶりに準々決勝進出を決め、東農大三は17年ぶりに8強入りと健闘した。

 2回戦で深谷商のエース鈴木が16奪三振、1回戦では春日部共栄のエース林が11連続奪三振と記憶に残る好投を見せた。

夢舞台へ大声援 笑顔はじけ「全国制覇を」

優勝が決まり喜びを爆発させる浦和学院の生徒ら

 3塁側スタンドには、浦和学院の生徒や保護者らが詰めかけ、試合前から熱気に包まれていた。吹奏楽部部長の早川さくらさん(17)は「今までで一番、大きくてきれいな音で力になりたい」と意気込み十分。生徒会副会長の波塚千恵さん(18)は「苦しい場面も多いと思うが、背中を押したい」と力を込める。

 野球部員の林田大空さん(16)は「泣いても笑っても今日が最後。悔いが残らないように全力で戦ってほしい。甲子園にいけるように応援で何点も取れるように全力で応援したい」。大沢奈保子教諭(40)は「学校一丸となって応援している。今まで勝ち上がってきたのでぜひ優勝してほしい」と期待を寄せる。

 「甲子園に行くために『ウラガク』に入った」という生徒会の矢部昊明さん(16)は四回表の攻撃で4点追加して花咲徳栄を突き放すと、「最高」と白い歯を見せた。父母会会長の名波義豊さん(49)は「まだまだ油断できない。最後まで点を取り続けてほしい」と手に汗を握った。

 勝利の瞬間、笑顔をはじけさせたのは、「がんばれ」と書かれた鉢巻きを巻いて応援した野球部の宮田典星さん(18)。「甲子園出場のために3年間やってきた。応援席ではなく、グラウンドに立ちたい気持ちもあった」と語った。

 宮田さんと抱擁を交わして喜びを分かち合った応援団の古沢朋樹団長(17)は選手たちに向けて「甲子園でも頑張ってほしい」と笑顔でエール。拍手と歓声に包まれたスタンドからは「甲子園で全部勝って、全国制覇を」という声も聞かれた。

甲子園で旋風を さいたま市・清水市長

 さいたま市の清水勇人市長は28日の定例会見で、「浦和学院の2年ぶり15度目となる全国高校野球選手権大会への出場、誠におめでとうございます。全員で戦うチーム野球で勝ち抜いた埼玉大会の勢いをそのままに、埼玉県代表としての誇りを胸に、甲子園でも浦学旋風を巻き起こしてください。夏の甲子園初制覇を成し遂げられることを134万人のさいたま市民とともに祈っています」と述べた。

ナインひと言

伊藤 充輝
甲子園では最高の調子にできるように、計画的にやっていく。
篠塚 大雅
埼玉の代表として、甲子園でも勝ち切れるように全力でやっていく。
名波 蒼真
甲子園でも全員野球で、自分の役割を、与えられた場面で発揮したい。
月山 隼平
埼玉代表としてここで満足するのではなく、全国でも勝ち上がる。
西田 瞬
1年生として出させてもらっている。甲子園でもワクワク楽しみたい。
石田 陽人
先輩たちに甲子園に連れて行ってもらえたので、1年生らしく楽しむ。
濱野 裕真
良い雰囲気で決勝に臨めた。甲子園にむけて、しっかり準備する。
小林 聖周
優勝できて最高。切り替えて甲子園に向けて状態を整えていきたい。
喜屋武 夢咲
最後の夏なので、好機での一本やチャンスメークなどで貢献する。
渡邉 聡之介
一発勝負で、大事な場面で失点ゼロに抑えて、甲子園も勝利に導きたい。
月野 龍
投手中心に良く守った。甲子園では日本一を目指し一戦一戦やっていく。
齋藤 廉武
20人全員で戦えた。甲子園でもしっかり戦って、思い切りプレーする。
細澤 貫道
リズムをつくる野球ができた。甲子園でも泥くさい全員野球で頑張りたい。
河内 廉太朗
自分たちの野球ができた。甲子園でも、頂点を目指して全力で戦う。
三井 雄心
少しでも長く3年生と野球ができるよう、一戦必勝で戦っていきたい。
小栗 透和
これまでの努力が報われた思い。甲子園でも、皆の応援に応えたい。
山田 悠莉
優勝まで導いてくれた3年生の背中を見て学び、来年につなげていきたい。
江口 英寿
前回は悔しい結果だった。森監督初めての甲子園で優勝をつかみ取る。
鈴木 夕稀
打線に助けてもらった。甲子園でも任されたイニングは全力で投げ切る。
田中 樹人
一番緊張した。甲子園でも終盤を任されると思うが、しっかりと抑える。

(埼玉新聞)

浦和学院2年ぶり夏切符!森監督は涙「生徒たちありがとう!」急逝の三浦貴コーチに届けた

3回表浦和学院2死二塁、三井の右前適時打を喜ぶ森監督(左)と選手たち

 急逝した三浦貴コーチにささげる優勝だった。浦和学院は花咲徳栄に勝利し、2年ぶり15度目の夏の甲子園出場を決めた。優勝の瞬間、ベンチ前にいた森大監督(32)は大きくガッツポーズを見せ、天を見上げると涙があふれ出た。「すいません!もう…涙を流してしまって…。最高の相手と最高の試合ができて、生徒たちに本当に感謝したい。生徒たち、ありがとう!」。そう話すと、喜びに沸く選手たちも、涙をこぼした。

 1-1の同点で迎えた4回。2死満塁で喜屋武夢咲(きゃん・ゆめき)外野手(3年)が右前適時打を放ち2点を勝ち越し。打線が続きこの回打者一巡、4安打4得点で突き放した。

 6回にも先頭打者の小林聖周野手(3年)が中越え三塁打でチャンスをつくり無死満塁。1年ながら4番に座る西田瞬内野手の三ゴロで1人が生還。直後の三井雄心内野手(2年)が右前適時打を放ちもう1点追加した。三井は3安打3打点の活躍で勝利に貢献した。

 大会中の24日にはOBで巨人、西武でプレーした三浦貴コーチが直腸がんのため45歳で死去。試合後、森監督は「天国で見てくれている三浦先生のためにも生徒たちは頑張ってくれました。みなさん、選手たちに拍手をおくってあげてください」と、涙をこぼした。続けて、江口英寿主将(3年)も「悲しいこともあったんですが、悲しく思わずに…天国で見てくれている三浦先生のために絶対に勝とうと思って……今日勝ててよかったです」と、声を震わせた。

 前回、21年の夏の甲子園出場時、森監督はコーチで、監督としては初めてとなる。「みなさんのご期待に応えられるかわかりません。生徒たちが頑張ってくれます。応援よろしくお願い致します」と、球場に詰めかけた観客に誓った。

(日刊スポーツ)

浦和学院、亡き三浦貴さんに捧ぐ夏甲子園 指揮官大粒の涙「天国で見てくれている三浦先生のために…」

優勝した浦和学院ナイン

 第105回全国高校野球選手権埼玉大会は28日、大宮公園で決勝が行われ、浦和学院が花咲徳栄を7-2で下し、2021年以来2年ぶり15度目の甲子園出場を決めた。

 3回、5番・三井の右前適時打で1点を先制。3回に同点とされたが、4回に3番・喜屋武の右前2点適時打で勝ち越した。さらに4番・西田、5番・三井の連続適時打でこの回4点を挙げた。6回にも三井の右前適時打などで2点を追加した。

 投げては先発の左腕・鈴木が3回で降板したが、4回から登板した渡辺が追加点を許さない好救援。8回からは3番手・月野、9回からは4番手・田中がマウンドに上がり、リードを守り切った。

 優勝の瞬間、森大監督はガッツポーズし、涙を浮かべて天を仰いだ。

 大会中の24日には、OBで巨人などで活躍し、13年からコーチを務めていた三浦貴さんが大腸がんのため45歳の若さで死去。ナインは亡くなる2週間前までグラウンドで指導を受け、森大監督も長年慕ってきた大きな存在へ捧げる甲子園切符となった。

 優勝インタビューで森監督は「本当に最高の相手と、最高の試合をできて、生徒に感謝したいです。生徒ありがとう!」と涙をぬぐった。「この44期生は昨年の夏の決勝で負けを経験して、ずっと悔しい思いをしてきて。昨日のミーティングでは、3年生には、1、2年生と一緒に全員野球できる、それが一番の長所だと話しました。今日は全員でつかんだ勝利だと思います」と声をつまらせた。

 2017年以来6年ぶりとなる花咲徳栄との決勝でリベンジ。「コーチの時に、バックネット裏で負けた瞬間見ていて、ほんとに悔しかったんですけど…今日果たせて良かった」と振り返り、「天国で見てくれている三浦先生のためにもと、選手たちは頑張ってくれました。選手たちに大きな拍手をあげてください」と涙が止まらなかった。

 監督としては初の夏の甲子園となる。「浦和学院としては15回目ですが、私としては初出場。皆さんのご期待にそえるかわかりませんが、生徒たちが必ず頑張ってくれると思います。埼玉代表として恥じないように頑張ります」と意気込んだ。

 また、江口主将は「最高です。それと三浦先生に捧げた勝利だったと思っています」と涙をこらえながら喜んだ。「悲しいこともあったんですけど、悲しく思わず、天国で見てくれている三浦先生のために絶対に勝とうと思っていた。勝てて良かったです」と亡き三浦さんに思いを馳せた。

(スポニチ)

天国で見ている三浦先生のために…浦和学院、「超速攻」掲げて涙のV

優勝を決め、喜ぶ浦和学院の選手たち

 優勝した浦和学院の選手たちが、感極まってベンチ裏で泣き崩れていた。秋春の県大会はいずれも決勝で敗れた。「最後の夏ぐらいは笑おう」と言っていたのに、だ。

 どうしても負けられない理由があった。

 今月24日、コーチを務める三浦貴(たか)さんが病気で亡くなった。同校OBで、東洋大を経て巨人と西武でプレー。現役引退後の2013年から指導していた。45歳だった。

 時にユーモアを交えながら、プロでの経験をいかし、親身に指導していたという。主将の江口英寿は「いつも正しいことを教えてくれた」と慕っていた。2021年から母校を指導する森大監督にとっても、「兄弟子のような存在」だ。

 訃報(ふほう)は25日の準々決勝で勝利した後のミーティングで、監督から選手に伝えられた。森監督はこうも言った。「三浦先生は、『大会に集中させてあげて欲しい』と言っていた」と。

 選手たちは「勝って甲子園に行くことが恩返しになる」と誓い、決勝に臨んだ。二塁手の月山隼平は、三浦さんからもらっていたグラブを着けて守備につき、ベンチの千羽鶴の上には、三浦さんの帽子を飾った。

 相手は全国制覇経験のある花咲徳栄。一回から3番の喜屋武夢咲に犠打をさせるなど、1点ずつ取りにいくことにこだわる。

 同点の四回、内野安打と2四球で2死満塁の好機を作ると、喜屋武から3者連続の適時打。一挙4点を奪った。

 1番打者の小林聖周は六回、中堅フェンス直撃の三塁打を放つ。大会前の練習試合、打撃に悩んでいたときに三浦さんはベンチ裏でこう教えてくれた。「肩が内側に入って、バットが出づらくなっている」。自分では気づいていなかったくせだった。意識してスイングすることで確実性が増した。後続の適時打で生還し、6点目のホームを踏んだ。

 投げては4投手を小刻みにつなぎ、リードを守った。

 主将の江口は優勝を決めた後のインタビューでこう言った。

 「悲しいこともあったんですけど、悲しいって思わないようにした。天国で見ている三浦先生のために、絶対勝とうと思いました」

 今年のテーマは足と巧打でつなぐ「超速攻」。今大会は7試合すべてで先制点を奪った。

 翌日に三浦さんの通夜があり、森監督は就任後に初めて夏の甲子園に出場することを報告する。高校時代にエースとして春夏連続で甲子園に出場した三浦さんは生前、「甲子園はお祭りだ」と言っていた。

 思いを継いだ後輩が、はつらつと聖地を駆け回る。

(朝日新聞)

浦和学院が天国の三浦貴コーチにささげるV「パワーをもらったような気がした」

優勝し笑顔で写真に納まる浦和学院の選手たち

 天国の三浦貴コーチにささげる優勝だった。浦和学院(埼玉)が花咲徳栄を破り、2年ぶり15度目の夏の甲子園出場を決めた。大会中の24日、巨人などでもプレーした三浦コーチが、直腸がんのため45歳で急逝。ナインは感謝の思いを胸に決勝の舞台に立ち、喜屋武(きゃん)夢咲(ゆめき)外野手(3年)は、同点の4回2死満塁で決勝の右前2点適時打を放った。21年秋に就任した森大監督(32)にとっては、初めての夏の甲子園出場となった。

 9回が始まる直前、主将の江口英寿外野手(3年)はナインを集め、田中樹人(みきと)投手(3年)が持ってきた帽子を見せた。1年生のときに、三浦コーチから譲り受けたものだった。5点リードの最終回。2死一、二塁でその田中が相手打者を中飛に打ち取ると、マウンドに歓喜の輪ができた。森大監督(32)は「天国で見てくれている三浦先生のために、選手たちは頑張ってくれました」と涙した。

 4回に流れをつかんだ。2死満塁で、喜屋武が右前に決勝の2点適時打。「最後は気持ち。自分が出来ることを全力でやれ」。三浦コーチにかけられた言葉を打席で思い返し、真ん中高めのボールをはじき返した。「自分がここで打ってチームを少しでも楽に進めたかった」。この回一挙4得点で、花咲徳栄を突き放した。

 点差は開いても、楽な戦いではなかった。出塁を許さなかったのは5回だけ。それでも江口主将は、体がきついと感じたらグラウンドに「三浦貴」の文字を書いたといい、「ピンチになったら空を見上げていました」。内野守備陣は2、6、8回と3度の併殺を完成。江口は「パワーをもらったような気がしました」。天国で見守るコーチとともにつかんだ、埼玉制覇だった。

 三浦コーチの座右の銘は「一瞬に生きる」。今この瞬間に全力を尽くす。甲子園でも一戦必勝を続け、次は日本一を墓前に報告する。

(日刊スポーツ)

聖地で目指す「打率5割」浦和学院3年・小林聖周選手

浦和学院・小林聖周選手

 「夏は悔いのないようにと、ここまでやってきたことが実った」

 甲子園への切符をつかんだ「チームの心臓」は、うれしさをかみしめた。

 昨年から1番打者を任され、チームを引っ張ってきた。経験が豊富な中心選手として「どんな打席内容でもチームに勢いをつけられるように」と意識して試合に臨んできたが、秋や春の大会では思うような結果が出せずに苦しんだ。

 昨年はいわゆる「スター選手の集まりだった」といい、自分たちの世代がタイトルを獲れていないことに負い目を感じていた。だが、地道な練習の成果が今夏、ようやく実を結んだ。

 森大監督に「小林なくして浦学なし」と言わしめるリードオフマンは、決勝の舞台でも2安打3出塁と役割を果たした。六回先頭の場面では、相手投手の直球を思い切りたたき、中堅手の頭を越える三塁打を放つと、塁上でガッツポーズを見せた。その後6点目のホームを踏み、試合を決定づけた。

 優勝直後だが「甲子園に向けて切り替えたい」と慢心はない。「聖地」での目標は「打率5割」。全国制覇の夢をつかむため、チームの先頭でバットを振る。

(産経新聞埼玉版)

浦和学院「三浦先生も一緒に戦いました」三浦コーチに捧げる夏の甲子園

 埼玉大会は、浦和学院が花咲徳栄に7-2で打ち勝って2年ぶり15度目の優勝を決めた。OBで巨人などで活躍し24日に急逝したコーチの三浦貴さんに捧げる選手一丸の優勝だった。

 亡き恩師に全員で優勝を届けた。最後の守りに向かう浦和学院の円陣の中央には、24日に45歳で急逝した三浦貴コーチのグラブと帽子。ウイニングボールをつかんだ中堅手の江口英寿主将(3年)は「体がつらかったと思うんですが、6月は政治経済の授業に出ていたし、7月には練習にも来てくださった。きょうは三浦先生も一緒に戦いました」と感謝の思いを語った。

 埼玉県内で最大のライバルとの決勝も、いつも通りの戦いができた。3回に先制して直後に追いつかれたものの、4回に下位打線からつくった好機にクリーンアップが3連打で一挙に4点。守っては4人で継投して最後まで主導権を渡さなかった。埼玉の7試合は1度もリードを許すことなく走りきった。

 浦和学院監督としてセンバツ優勝もした父の森士副校長からチームを引き継いだ森大監督は「三浦先生のために、と選手たちが頑張ってくれました」と涙を浮かべた。

 三浦さんは「兄弟子的な存在」。親身になって最後までサポートしてくれたという。この瞬間を待つことなく病魔の前に力尽きたが、森監督は「あしたのお通夜で、きちんと優勝の報告をできるのをうれしく思います」と話した。

 センバツも経験した小林、喜屋武ら3年生が下級生もやりやすい雰囲気をつくり、4番の西田と5番の三井の1、2年生コンビも融合。決勝で3安打3打点の三井は「下級生ですが、打線を引っ張っていく思い。三浦先生に教えてもらった(三塁)守備も見せたい」と誓った。就任1年目でセンバツ4強だった森監督。全国制覇の夢も膨らむ初めての夏の甲子園だ。

(中日スポーツ)

つなぐ意識、決勝打呼ぶ 喜屋武夢咲右翼手

 「ここで終わると流れを持って行かれてしまう」。同点の四回2死満塁で巡った打席。自分では終わらせない、と気合いを入れた。真っすぐの真ん中高め。当たりは芯よりも少し先だったが、打球は一、二塁間を抜けて2点適時打に。続く4番の西田瞬、5番三井雄心の適時打につなげた。森大監督は「この回の勝ち越し点が全てだった」とたたえた。

 那覇市出身。1年上で同郷の宮城誇南(現早稲田大)に憧れて進学した。22年のセンバツは「先輩が連れて行ってくれた」。背番号7をつけたが甲子園では8打数1安打。その夏の埼玉大会は決勝で敗れた。

 森監督からは「最弱の世代」と言われたといい、力のある1、2年生が活躍できるよう、3年全員で雰囲気を作った。

 中軸を任されるが、本塁打よりも、低く速く守備の間を抜く打球が自身の強みだ。後ろには頼りになる後輩がいる。

 先輩に経験させてもらった夢の舞台へ、後輩と共に再び挑む。

(毎日新聞埼玉版)

応援団長・古沢朋樹さん、背番号は諦めたけど―

優勝を決めた選手たちに拍手を送る浦和学院の応援団長の古沢朋樹

 高校野球の地方大会では、背番号は「20」までしか与えられない。

 浦和学院の応援団長の古沢朋樹は、昨秋の新チーム発足と同時に背番号をつける夢をほぼ諦めた。応援団長はレギュラーが望めそうにない者の中から部員の話し合いで選ばれる。「団長に選ばれて、選手はもうないなって自覚しました」

 鴻巣市出身。「浦学」のユニホームが、幼い頃からの憧れだった。新チームとなり、「さあ」と期待を膨らませた矢先の指名。「正直、悔しかった」という。でも、ずっと支えてくれた両親は「頑張れ、応援団長」と喜んでくれた。

 真夏のスタンドで、ワイシャツにネクタイ、それに冬服のブレザーを着込み、大汗を流し、声をからした。仲間がつかんだ2年ぶりの優勝。選手を外れ、一時は悔しかったという応援団長はいま、「最高の気分です」と声を震わせる。「甲子園でも選手を支え続けます」

 全校応援で三塁側席をスクールカラーの赤に染め上げた浦和学院の大応援団には、見えていたはずだ。懸命に背負い続けてきた彼の「背番号21」が。

JR大宮駅前、本紙号外配布

 朝日新聞社は、決勝の結果を伝える号外計3千部をJR大宮駅の東口と西口デッキで配った。1時間余りですべて配り終わり、受け取った人は「浦和学院には甲子園でも頑張って勝ち進んでほしい」と活躍を期待していた。

(朝日新聞埼玉版)

試合結果

全国選手権埼玉大会・決勝(7/28・県営大宮)

TEAM123456789HE
浦和学院0014020007100
花咲徳栄0010000012130
【浦】鈴木、渡邉、月野、田中-篠塚
【花】木田、岡山、上原-柴田
小林(浦)
喜屋武(浦)新井(花)

打撃成績

 浦和学院
位置選手名打数安打打点
小林420
月山300
喜屋武322
西田512
1田中000
三井333
篠塚500
石田510
6小栗000
鈴木100
H河内000
1渡邉100
1月野000
H3名波100
江口310
34107
 花咲徳栄
位置選手名打数安打打点
田中510
生田目422
石塚520
小野400
増田420
斉藤420
柴田320
木田100
1岡山100
1上原100
H山谷100
三上100
H新井110
R9目黒110
36132

投手成績

 浦和学院
選手名安打三振四球死球失点自責
鈴木3420111
渡邉4531000
月野1100000
田中1300011
91351122
 花咲徳栄
選手名安打三振四球死球失点自責
木田3 2/3813155
岡山1 2/3200222
上原3 2/3051100
91064477

チーム成績

TEAM攻撃守備
三振四死球犠打盗塁残塁失策併殺
浦和学院68301103
花咲徳栄52101000

ともに2桁安打の打ち合いとなった試合は、浦和学院1-1の四回に、花咲徳栄のエース木田を攻略して4点を勝ち越し。六回にも2点を追加して押し切った。

 

浦和学院は三回2死二塁から5番三井の右前適時打で先制。同点の四回は、2死満塁から3番喜屋武、4番西田、5番三井の連続適時打で4点を追加した。六回には、5番三井のタイムリーなどで2点を奪い、畳みかけた。投げては先発鈴木が3回被安打4、1失点。四回から渡邉、八回から月野が無失点でつなぎ、九回は田中が1失点に抑えた。

 

花咲徳栄は、2番生田目が放った三回の右犠飛と九回の左前適時打の2点のみ。相手を上回る計13安打を記録したが、長打が1本だけと好機を生かすことができなかった。

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美ら
美ら
2023年7月28日 9:03 PM

甲子園出場おめでとうございます⚾️
いつも応援してます
甲子園での勝利待ってます

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