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浦和学院、昨夏王者の仙台育英に敗れる 18安打放つも守りからリズム作れず

【写真】乱打戦の末に敗れた浦和学院の選手たちは涙を流して引き揚げる

 第105回全国高校野球選手権記念大会第1日は6日、兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕。1回戦3試合が行われ、埼玉代表で2年ぶり15度目出場の浦和学院は昨夏覇者の仙台育英(宮城)に9-19で敗れた。

 浦和学院は先発鈴木ら6投手の継投も被安打19、19失点と相手の強力打線に苦しんだ。打撃陣は9点を追う四回、3番喜屋武からクリーンアップの3連打と主将江口の2点適時二塁打などで4点を返した。4-15で迎えた七回には、打者一巡の攻撃で5得点。計18安打を放つも序盤の大量失点が響いた。

浦学、追い上げ及ばず 序盤の失点響く

3回裏、仙台育英に追加点を奪われ、マウンドの渡邉(10)のもとに集まる浦和学院ナイン

 両チーム合わせて37安打、3時間を超す打撃戦を演じるも王者の壁は厚かった。2年ぶりに夏の甲子園の土を踏んだ浦和学院ナインは、前回大会覇者の仙台育英の前に敗北。森監督は「守備からリズムをというのができなかったのが敗因」と6失策が絡んだ失点を悔やんだ。

 一回に仙台育英に5安打を浴び4失点。この夏初めて追いかける展開となったが、ここで終わらないのが浦学打線。9点を追う四回に意地を見せる。先頭喜屋武から西田、三井のクリーンアップの3連打と、9番江口の2点適時打で一挙4点を返した。

 4-15と点差を広げられても、攻めの姿勢を貫いた。七回には打者10人を送り出す猛攻。前日に「手応えがあって調子がよい。真っすぐに振り負けないようにしたい」と話した月山の右前適時打など、この回6安打で5点を奪った。

 「先制点を取られたときに真価が問われる」と指揮官。この日はどれだけ点差を広げられても、闘志の火をともし続けた。勝利を手にすることはできなかったが、昨年優勝時のメンバーが7人残る仙台育英を相手に食らいついた。

 3度目の夏の甲子園での対決。軍配は仙台育英に上がり、浦学ナインの夏はここまで。それでも、甲子園球場には大健闘をたたえる拍手と歓声が響き渡り続いていた。

1年の4番存在感 西田

4回表浦和学院無死一塁、西田が左翼線に適時二塁打を放つ。捕手尾形

 4番西田が高校野球の聖地で、1年生らしからぬ存在感を見せた。9点を追う四回無死一塁、甘く入った140キロの直球を捉えた打球を左翼線の深くまで運び1点を返すと、この日、二塁打を含む2安打で2打点。

 底抜けの明るさとチャーミングな笑顔でチームを盛り上げる一方、打席では真剣なまなざしで強い打球を返す姿がたくましい。「今年は3年生に連れてきてもらった。次は自分がチームを引っ張る番」と誓う未来の主砲は、静かに闘志を燃やしていた。

自らのバットで鼓舞 主将・江口

 9番江口が、7点を追う四回2死一、二塁でしっかり振り抜くと、右中間を襲う2点適時打で打線を鼓舞した。「皆が応援してくれてなんとか振り切れた」と主将の第一声は感謝の言葉だった。

 今春から主将を担い、先発入りこそなかったが、三塁コーチャーとしてナインを支えた。自分の役割を探し続け迎えた今夏、献身的な努力が実を結び県大会準々決勝から先発入り。「チームのために打てなくても何ができるか考えた」と長打が光る浦学の打撃に、小技を絡め打線をつなげた立役者だった。

 「日本で一番長い夏にしたい」。大会前に語った夢こそかなわなかったが、昨夏の優勝校と互角に打ち合った一戦は一生胸に残るだろう。駆け抜けた2年4カ月を背に堂々と立った打席での姿はたくましかった。

爪痕残す2年生「来年もう一度」三井

 5番三井が2安打3打点と爪痕を残した。2年生にして高校通算30本塁打。身長180センチ、体重82キロと恵まれた体格も「努力に勝る天才なし。練習は結果につなげないと意味がない。質が大事」と人一倍練習に熱を入れる努力家でもある。

 この日は相手の投手陣から快音を響かせ「自信にはなった。でもまだまだ捉えきれていない」と悔しげな表情を浮かべた。「来年また、絶対にもう一度この場所に戻ってくる」と甲子園の土は持ち帰らないのは決意の表れだ。

応援団900人、全力で後押し

スタンドから全力で声援を送る浦和学院応援団

 第105回全国高校野球選手権記念大会は6日、兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕。開会式と1回戦3試合を行い、2年ぶり15度目出場の浦和学院は仙台育英(宮城)と初戦を迎えた。今大会は4年ぶりに声援が解禁。昨夏覇者との白熱の一戦にアルプススタンドの応援も一層熱が入った。

 この日は、父母会や生徒ら約900人の大応援団が一塁側アルプスを浦学カラーの赤で彩った。父母会長を務める名波蒼真内野手の父・義豊さん(48)は「一体となった応援は必ず選手の力になる」と浦学サンバやマーチに合わせた踊りで選手を鼓舞した。

 2018年の仙台育英戦でもスタンド応援を経験した吹奏楽部の卒業生大峡ゆうかさん(20)は「やっと夏が戻ってきた。選手が楽しんでくれるのが一番」。ソングリーダー部の部長の矢野さくらさん(18)は「甲子園での声出しは初めて。とにかく元気よく応援したい」とスタンドが一丸となり全力でエールを送った。

(埼玉新聞)

浦和学院、初戦敗退も拍手鳴りやまず…剛腕トリオから不屈の18安打

 第105回全国高校野球選手権記念大会が6日、甲子園球場で開幕した。第3試合では昨夏優勝校で2年連続30度目出場の仙台育英(宮城)と2年ぶり15度目出場の浦和学院(埼玉)が対戦。優勝候補対決として注目を集める中、浦和学院は壮絶な打撃戦の末、9-19で敗れた。

 埼玉大会7試合で4発66得点と猛打で勝ち上がったが、3回まで仙台育英の先発・湯田に5三振、2安打と苦しんだ。

 午後5時35分に試合が始まり、2回表からは早くも内野の照明が点灯された。投手陣も立ち上がりを攻められて3回までに9点リードをつけられたが、4回に反撃。攻撃前に外野の照明もつけられて点灯試合となると、喜屋武、1年生4番・西田、三井の3連打と江口の右中間適時二塁打で4点を返した。

 6回には11点差をつけられたが、ただでは終わらない。5点を返し、6点差まで詰め寄った。先発・湯田、2番手・高橋、3番手・仁田と仙台育英「150キロトリオ」から18安打を浴びせた。仙台育英は19安打。両軍合わせて37安打の壮絶な打撃戦となった。

 江口主将は「優勝候補との仙台育英さんとの試合で、初回の入りというか、自分たちの持ち味は先制点をとって流れを持って行くという気持ちでいったんですが…エラーの多さが。地区大会はエラーしてなかったんですけど(7試合で3失策)、今日は6つ出てしまった。そのエラーがなければもう少し良い試合だったんじゃないかと思います」と悔しさをにじませた。

 仙台育英先発の153キロ右腕・湯田に対しては3回まで5三振と苦しみ「真っ直ぐもめちゃくちゃ速いんですけれど、左打者のインコースに食い込んでくる、カットボールとスライダーが本当に良いボールでもうどうしようもなかった」と驚いた様子で、「真っ直ぐに照準合わせて、真っ直ぐをつぶした中で変化球が甘く入ってきたらラッキーくらいに思って打席に立っていた」。

 両校は過去、夏の甲子園で2度の対戦。特に2013年夏、仙台育英が11-10でサヨナラ勝ちした激闘は球史に残る激闘として知られる。2度目の対戦は2018年夏。仙台育英・須江監督が就任して初の夏でいきなりの対戦となり、浦和学院が9-0でリベンジを果たしていた。

 10年前を彷彿とするような不屈の闘志を見せ、6投手を含む19人が出場する総力戦で食い下がった。ベンチ入りが今夏18人から20人となったため、甲子園史上最多の19人出場となった。今夏埼玉大会中に亡くなったOBでコーチの三浦貴さん(享年45)へ白星を届けようと、全力で戦った浦和学院ナインに場内からは拍手が鳴りやまなかった。

(スポニチ)

森監督「初戦の入りは難しい」急逝三浦コーチに勝利届けられず

 浦和学院(埼玉)は、夏連覇を狙う仙台育英(宮城)との打ち合いに敗れ、初戦敗退となった。2本塁打をふくむ19安打を許し、19失点。森大監督(30)は「初戦の入りは難しい。こちらのエラーもあり、流れが向こうに行ってしまった。もう1回、チームを作り直さないといけないですね」と話した。

 左のポケットには、7月に急逝した三浦貴コーチと富士山をバックに記念撮影した数年前の写真を忍ばせていた。試合後には急に雨が降り「最後まで見届けてくれたと思います。甲子園に校歌を響かせることはできませんでしたが、三浦先生が『まだまだだな。もう1回頑張れよ』と見てくれているのかなと」と話した。

(日刊スポーツ)

序盤の9点ビハインドから打線は反撃するも昨夏王者に屈す

 浦和学院は6人の継投も及ばず19失点。初出場した1986年夏の松山商戦(4-13)を超えるチームワーストを記録した。

 しかし、打線は18安打と反発力を見せ、1年生の4番・西田瞬らの活躍で2度のビッグイニングをつくるなど昨夏の王者を相手に激戦区・埼玉代表の意地は見せた。

 森大監督は「初回、こちらが不慮のエラーもあり、流れが向こうに行ってしまった。埼玉大会でできた守備からリズムをというのができなかったのが、すべての敗因かなと思います」と語った。仙台育英の強力投手陣から9点を奪った打線には「18安打、よくあれだけ打っていましたので、何とか勝機をと思って一生懸命ついていったんですけど、やはり最後突き放されてしまったので。去年、今年、経験の差が出たのかなと思います」と評した。

 「今年は3年生を中心に私をここに連れてきてくれて本当に感謝しかないです」と指揮官。新チームに向け「甲子園に来て、甲子園で上位に行く、勝つためにはもう一個、レベルをあげないといけないというのを痛感しましたので、投手力も含めてもう一度、つくりなおしてきたいと思います」と前を向いた。

(デイリースポーツ)

浦和学院のスタンドに元巨人・三浦貴コーチの遺影…野球部顧問「選手を支えてくれるはず」

三浦コーチの遺影を手に応援する今栄さん

 夏の甲子園大会で、6日の第3試合に登場した浦和学院(埼玉)のスタンドでは、野球部顧問の今栄尚人さん(30)が先月亡くなった同校OBで巨人などでプレーした元コーチ・三浦貴さんの遺影を手に応援した。

 今栄さんは監督就任前の森大監督、三浦コーチと3人で選手を指導していた「コーチ仲間」で、「貴さん」と名前で呼ぶなど信頼し合う関係だった。三浦コーチが亡くなる5時間前に会ったといい、「息を引き取る直前まで野球部のことを気にしていた」と振り返る。

 遺影と、4年前に3人で撮った写真を大切そうに持って声援を送り、「貴さんの見えない力が乗り移って、選手を支えてくれるはず」と話した。

(読売新聞)

浦和学院、18年は9-0で須江監督初采配の仙台育英に勝利 森前監督「切磋琢磨して」

スタンドから浦和学院の試合を見守った浦和学院・森前監督

 名将への道は、ここから始まる。

 浦和学院(埼玉)の森士前監督(59=現NPO法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブ理事長)は、スタンドから試合を見守った。「総合力が、仙台育英の方が上でしたね。経験の違いも出たのかなと思います。百聞は一見にしかず。いい経験値になると思う」と話した。

 9点を追う4回には打線がつながり、4点を返した。7回にも5点を追加。森前監督は「食らいついていくという、うちのチームの粘り強さが出た」と評した。

 両校は、直近10年の夏の甲子園で5年ごとに対戦。13年は11-10で仙台育英が勝利。仙台育英・須江航監督(40)の甲子園初采配となった18年は、9-0で森前監督が率いる浦和学院が勝利した。当時を、須江監督は「手も足も出ずに完敗した。あれが僕の高校野球のスタートになっている」と明かしていた。

 今回は、夏の甲子園初出場の浦和学院・森大監督(32)が、夏連覇を目指す仙台育英とぶつかり、黒星。森前監督は「時代の橋渡しですね。須江くんが(18年の)100回大会で味わったものがあると思う。こうやって、時代を引き継いでいく。勉強して、切磋琢磨(せっさたくま)していってほしい」と話した。

(日刊スポーツ)

浦和学院、18安打で昨夏の王者を慌てさせた「失策がなければ…」

四回表浦和学院2死一、二塁、江口は2点適時二塁打を放つ

 浦和学院が18安打を放ち、昨夏の王者を慌てさせた。四回。150キロ近い直球を投げる仙台育英の湯田統真から先頭の3番喜屋武(きゃん)夢咲が安打で一塁へ。1年生の4番、西田瞬は引っ張って左翼線への適時二塁打。5番三井雄心も続き、クリーンアップの3連打で2点を返す。なお2死一、二塁から、主将で9番江口英寿の右中間への適時二塁打でこの回4点を奪った。

 五回途中から登板した仙台育英の高橋煌稀にも襲いかかる。コーナーを突く右腕から七回に6本の単打を集めるなどして5得点。埼玉大会7試合で66得点を挙げた攻撃力で追い上げたが、及ばなかった。江口は「自分たちの持ち味の先制点が思うように取れなかった。失策がなければ、もう少し良い試合になった」と悔やんだ。

 森大監督(浦)「埼玉大会ではできた、守備からリズムを作る野球ができなかったのが最大の敗因。打線はよくあれだけ打ったと思います」

(朝日新聞)

天国の三浦貴さんに勝利届けられず江口主将「怒ってるんじゃ」後輩たちにリベンジ託す

 昨夏に東北勢として初めて甲子園大会優勝を果たした仙台育英が、19-9で浦和学院との打撃戦を制した。

 どんなに点差が開いても、浦学ナインは全力プレーをみせ続けた。7月24日にがんのため45歳で死去したOBでコーチの三浦貴さんに勝利を届けることはできなかったが、3時間17分を戦い抜いた。

 6失策が絡み同校最多の19失点。主将の江口英寿外野手(3年)は「三浦先生、怒ってるんじゃないですかね」とため息をもらしたが「最弱世代と言われていた僕たちに、先生は『おまえたちは甲子園へ行ける』と言ってくれた。下級生が多いので、来年につなげてほしい」と後輩たちにリベンジを託した。

 午前9時から開会式に臨み、試合開始は午後5時35分。初回4失点で降板した鈴木夕稀投手(3年)は「三浦先生に校歌を届けたかった。先生のようにプロに行けるように大学で頑張りたい」と誓った。

(デイリースポーツ)

浦和学院、奮闘に拍手 前年覇者と乱打戦 序盤失点響く

四回表浦和学院無死一塁、西田の安打で一塁から喜屋武が生還

 阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で6日に開幕した第105回全国高校野球選手権記念大会で、2年ぶり15回目の出場となった浦和学院は大会初日の第3試合で前年覇者の仙台育英(宮城)と対戦し、9-19で敗れた。「記憶に残る試合にしたい」(森大監督)の言葉通り全力を尽くした選手たちに、チームカラーの「浦学ファイヤーレッド」に染まったアルプス席からは大きな拍手が送られた。

 夏の甲子園で3回目の対決は、ナイターで計3時間17分の総力戦だった。

 序盤に大きく先行され0-9で迎えた四回、先頭打者の喜屋武夢咲(3年)が右前打。台風の影響で家族分の航空券が取れず、沖縄から1人で駆けつけた母の美紀さん(43)は「勝ったら次は家族で来るからと伝えた」。続く西田瞬(1年)が左越え適時二塁打を放ち、喜屋武が生還。西田の父、功さん(42)は「感謝の気持ちでやってこいと話した。支えてくれる先輩がいて、思い切ってバットを振ってくれた」と笑顔。更に三井雄心(2年)が左前適時打、江口英寿(3年)が2点適時打で4点を返した。

 七回にも打者一巡の猛攻。吹奏楽部のパーカッション担当、敦賀紗英さん(1年)は「コンクールで来られない上級生の分も音を届けます」。クラリネットを吹く卒業生の佐藤千華子さん(46)は「昔からピンチに強いチーム」と祈った。

 八回、九回にも走者を出して粘ったが、9-19でゲームセット。野球部OBで同校教員の今栄尚人さん(30)は「食らいついて感動を与える試合をしてくれた。(7月に死去した)三浦貴コーチも空から見守っているはず」。野球部応援団の古澤朋樹団長(3年)は「代表としてよく頑張ってくれた。ありがとう」とたたえた。

主将意地のタイムリー 江口英寿中堅手(3年)

 9点を先行された四回表、2点を返して2死一、二塁で回ってきた打席。引きつけて振った打球は外野手の間に落ち、走者一掃の2点適時二塁打。塁上で喜びのポーズを決め、ベンチは沸き上がった。

 福岡県出身。中学時代のチームのOB、美又王寿投手(中央大3年)が1年生投手としてマウンドに上がった2018年夏の甲子園の仙台育英戦をテレビで見て憧れ、進学した。くしくも5年後、主将として同じカードを引き当てた。

 「ゲームキャプテン」の小林聖周(3年)と2人体制で主将を務める。先頭打者で攻守の要である小林の負担を減らそうと、自ら主将を買って出た。埼玉大会での背番号は18。控え野手としての出場が多かった分、「2枚目の選手の気持ちが分かるから」と多くの部員に届く言葉を持っていた。

 九回表の浦和学院最後の打席に立ったのは背番号8番の江口。打った白球は中堅手に捕球され、浦和学院の夏は終わった。「ここまで連れてきてくれた仲間にありがとうと伝えたい」

選手たちに感謝 浦和学院・森大監督

 初回に失策が重なり守備からリズムを作ることができなかった。一方で選手たちは仙台育英の投手陣から18安打を取り最後まで食らいつこうとする姿勢が光った。甲子園まで連れてきてくれた選手たちには感謝しかない。

(毎日新聞埼玉版)

浦学は諦めない 熱戦3時間17分、昨夏覇者猛追

四回表浦和学院2死一、二塁、江口の2点適時二塁打で二塁走者に続いて生還した一塁走者石田(中央)

 埼玉代表の浦和学院は6日の大会第1日の第3試合で強豪・仙台育英(宮城)と対戦した。9-19で敗れたものの、中盤以降打線がつながり、昨夏の優勝校を激しく追い上げる底力を見せた。序盤に大量リードを奪われながらも勝利を信じ、最後まで諦めずに戦う姿勢に、会場からは大きな歓声と拍手が送られた。午後5時半すぎから始まった試合は、3時間17分の熱戦となった。

気配りの人「野球楽しもう」江口英寿主将

 三回を終わって0-9。仙台育英に序盤で圧倒的なリードを許し、ワンサイドゲームになりかねない試合の流れを変えたのは、主将の一振りだった。

 「ここまできたら、エンジョイベースボールだ」。主将の江口英寿がベンチで声をかけて始まった四回は、無死から中軸3人の活躍で2点を返す。後続が倒れ、2死一、二塁で江口に打順がまわった。

 「みんながつないだ走者を帰そう」。そう心に誓って振り抜いた打球は、少し詰まったが、浜風に乗った。右中間を抜ける貴重な2点適時打になった。観客の歓声がこだまし、江口は塁上で拳をあげてみせた。

 江口は埼玉大会の序盤は控え出場が続いたが、守備力を買われ、準々決勝からは9番で先発起用。つなぐ役割を期待され、「打てたらラッキーだと思います」と控えめだった。それでも埼玉大会で3割を超える打率を残し、甲子園での先発出場を勝ち取った。

 持ち前の明るい性格で、厳しい試合が続いたときにもチームを盛り上げてきた。試合会場に向かうバスの中で、仮装して余興をみせ、仲間の緊張を和らげることもあった。

 新チームが昨秋に発足した当初は、打線の中核の小林聖周が主将だった。しかしプレーとチーム運営の両面をさばくのは負担が重く、副キャプテンの江口が主将に昇格した。「小林一人に頼り切りではダメだと思った」

 主将交代で、小林はプレーに集中できるようになり、状態が向上。「小林中心のチーム」から「全員野球のチーム」に脱皮するきっかけになった。森大監督も江口を「とても気を配れる選手」と信頼していた。

 昨年の優勝校を相手に最後まで息をつかせない熱戦。浦学の夏が終わった。

「多くの声援、5点返せた」浦和学院・江口英寿主将

 9点リードされたときには応援してくれる人のためにも試合を楽しもう、と思った。終盤に5点返せたのは多くの声援があったから。感謝しています。下級生が仙台育英から多くの安打を打ってくれた。来年に向けて自信になると思う。

「食らいつく姿勢出せた」浦和学院・森大監督

 ナイター、強風と難しい試合だったと思うが、特に終盤は食らいつくという姿勢を見せてくれた。3年生を中心にこの舞台に連れてきてくれたことには感謝しかない。もっと上を目指すにはもう1ランク、力をつけないといけない。

「つなぐ意識、勝利の理由」仙台育英・山田脩也主将

 相手の先発投手の球が緩く、低く強い打球を意識したら長打が出たので、うまくかみ合った。守備で崩れないように、点差が開いても失策を出さないことを心がけた。攻撃が投手陣を救った。つなぐ意識をしたのが勝てた理由だろう。

「すごい強い相手だった」仙台育英・須江航監督

 こんな試合になるなんて思っていなかった。すごいな、甲子園と思った。浦和学院は何回離してもついてくるすごい強いチームだった。湯田、高橋で抑えるつもりだったが、相手が全ての想定を上回ってきた。投手陣はよく投げたと思う。

(朝日新聞埼玉版)

浦和学院、スタンドまとめる応援団長 仲間信じて最後まで応援

スタンドを真っ赤に染めて大声援で応援し続ける浦和学院の応援団6日、甲子園球場

 第105回全国高校野球選手権大会第1日の6日、第3試合で浦和学院(埼玉)は仙台育英(宮城)と戦い、19-9で敗退した。

 浦和学院では応援団を一つにまとめる応援団長を毎年新チームが始動する秋の大会前に決める。強豪校で選手として出場を目指して入学した選手が応援団長に就任し、チームのためにと仲間を信じて一塁側から声援を送っている。

 今年の応援団長を務める古沢明樹さん(17)は「応援団長就任時には、正直メンバーに入りたいという気持ちがあり悔しかった」と部員100人を超える大所帯で背番号をつける厳しさを話した。以降練習に参加してメンバー入りを目指したが、最後の夏もベンチ入りすることはできなかった。しかし「後輩も含めて全員を全力で応援しようと思った」と切り替えた。

 制服であるブレザーに3年生で決めた言葉という「下克上」と書かれたハチマキをし、スタンドを盛り上げる。古沢さんは「正直性格は最初から盛り上げるタイプではないが、応援になったら別」とチームのためにスタンドから力を注いだ。

 古沢さんは、毎試合後にメンバーからいつも応援ありがとうといわれることがうれしいと笑顔で話した。試合は敗れたものの最後まで声を出し応援し続けた。

(産経新聞埼玉版)

試合結果

全国選手権大会・1回戦(8/6・甲子園)

TEAM123456789HE
浦和学院0004005009186
仙台育英40501504x19191
【浦】鈴木、渡邉、細澤、月野、田中、伊藤-篠塚
【仙】湯田、高橋、仁田-尾形
尾形、湯田(仙)
江口、西田(浦)斎藤敏、鈴木、斎藤陽、湯浅(仙)

打撃成績

 浦和学院
位置選手名打数安打打点
小林520
月山531
喜屋武530
西田422
三井423
R5河内100
篠塚520
石田311
6小栗100
鈴木000
1渡邉200
H濱野100
1細澤000
1月野110
1田中000
1伊藤000
H名波110
R山田000
江口412
42189
 仙台育英
位置選手名打数安打打点
橋本533
山田421
湯浅523
斎藤陽520
斎藤敏312
4登藤110
鈴木312
H7伊藤101
尾形533
湯田211
1高橋100
H寺田110
R浜田100
1仁田000
④3住石321
401917

投手成績

 浦和学院
選手名安打三振四球死球失点自責
鈴木1500144
渡邉4752066
細澤1/3200040
月野1 2/3324043
田中2/3212011
伊藤1/3010000
8199811914
 仙台育英
選手名安打三振四球死球失点自責
湯田4870044
高橋4832154
仁田1200000
918102198

チーム成績

TEAM攻撃守備
三振四死球犠打盗塁残塁失策併殺
浦和学院10301961
仙台育英99421012

浦和学院は6失策が絡んだ失点が響き、互いに2桁安打の打撃戦で仙台育英に力負けした。9点を追う四回に喜屋武、西田、三井の3連打と、江口の2点適時打で4点を返した。七回には打者10人の猛攻で5点を追加したが、追いつけなかった。投手陣は6人の継投も実らず、被安打19、19失点と相手打線を止められなかった。

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