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センバツ初V浦和学院・桜咲く(3)選手を信じ、大願成就

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ベンチから笑顔で選手を見守る森士監督(左)

 森士(おさむ)監督、48歳。22年の監督歴で、チームを甲子園に導くこと春夏通算18度。今大会の最多出場監督だ。現役監督で森監督より甲子園出場回数が多い指揮官は、横浜(神奈川)の渡辺元智監督ら5人で、いずれも全国優勝経験がある。

 その名将たちの仲間入りを、ついに果たした。

  優勝監督インタビューが終わり、大勢の記者に囲まれた森監督は、「夢のようですね。優勝された監督さんがインタビューされているのを見て、『すごいな』っ て思ってましたが、まさか自分がインタビューされることになるとは…」。そう視線を上げると、聖地には晴れ間が差し込み、指揮官の顔を照らした。

  監督1年目の27歳で1992年の選抜大会に初出場し、いきなり4強に進んだ。その後は98年と02年に選抜大会でそれぞれ8強に進んだが、その他は結果 をなかなか残せなかった。05年春から11年春までは、出場した5大会連続で初戦敗退。全国制覇を狙えるだけ戦力が整っていたチームもあり、「負けられな い」という重圧が、知らず知らずのうちに自らを苦しめていた。

 甲子園で負け続けた結果、「いろいろな面で取り越し苦労だった」ことに気が付いた。練習に対する厳しさは変わらなかったが、選手やコーチに任せる時間が増えてきた。もともと、力のある選手たち。あれこれ心配するより、本番で彼らの力を発揮させることを重要視した。

 すると昨年の選抜大会で8年ぶりに甲子園で勝利を挙げると、ベスト8入り。夏も自身が率いて阻まれ続けた2回戦の壁をついに突破した。

  最近よく口にするのが、「甲子園で野球ができることに喜びを感じて、真剣勝負を楽しみたい」。試合中はベンチの中央に立って、得点が入れば選手と一緒に手 をたたいて喜び、好守備を見せた選手を満面の笑みで出迎えた。凡退した選手にも肩に手を置いて激励する。そんな光景が何度も見られた。

 今大会は強攻策が成功する場面が多かった。象徴的だったのが決勝の済美(愛媛)戦。

  1点を追う五回、先頭の斎藤が安打で出塁すると犠打はせず、3連打で同点。さらに3番山根から5連打の猛攻。この回打者12人、8安打で一挙7得点し試合 を決めた。「小さく野球をやるより、勇気を持ってスイングした方が好結果になると思った。今回は選手を信じて、思い切った采配ができた」。指揮官が自信を 持って送り出したナインは、その思いに応えた。

 18度目の正直。「負けてきた数、味わってきた悔しい思い、今は全てが財産」。言葉には、ずっしりと重みがあった。

(埼玉新聞)

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