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浦学、V2王手 聖望との激闘制す きょう決勝・浦和学院×川越東

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【写真】9回表2死二塁、斎藤が右中間に決勝三塁打を放つ。投手川畑、捕手岩本=県営大宮(埼玉新聞)

 (27日・県営大宮)

 第12日は準決勝が行われ、浦和学院と川越東が28日の決勝に進んだ。浦和学院は2年連続16度目、川越東は初の決勝進出。公立校で唯一ベスト4入りした市川口は川越東に敗れ、16年ぶりの決勝進出はならなかった。

 選抜大会覇者で、初の4季連続の甲子園出場を狙うAシード浦和学院はDシード聖望学園に1-0で競り勝った。

 0-0で迎えた九回、2死二塁から6番斎藤の右中間を破る適時三塁打で決勝点を奪った。準々決勝で完全試合を達成した先発の小島は要所を締め、聖望学園打線を5安打完封。聖望学園は再三の好機を生かせず、二回途中からリリーフ好投したエース川畑を援護できなかった。

 Cシード川越東は、三回までの5得点で試合を決め、市川口に5-1で快勝した。

 一回に3番高梨の中前打で1点を先制。三回には1死三塁から再び高梨の適時打で加点すると、正木の左中間への2点二塁打、長野の右前打でこの回計4点を挙げた。先発の高橋尚は5安打1失点で完投勝利。市川口は序盤の大量失点が響いた。2番手の佐々木が粘ったものの、打線は七回に山川の三塁打で1点を返すにとどまった。

 決勝は県営大宮で午前10時にプレーボール。

◇真骨頂の完封劇 エース小島 浦和学院

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【写真】聖望学園打線を5安打完封した浦和学院の小島(埼玉新聞)

 2年生左腕が完全試合の後だからこその真価を発揮した。エース小島が聖望学園を5安打完封。「徳栄もノーヒットノーランの後に負けている。この試合が大一番という気持ちで、1点取られたら終わりだと思って全力で投げた」。最後まで気を抜かず1-0の勝利を演出した。

 聖望学園・川畑との投手戦で投げ勝った。六回2死から唯一の連打を浴びて一、三塁のピンチを招いたが、6番田畑をスライダーで3球三振。七回には先頭打者の初球に二塁打を打たれて1死三塁のピンチを迎えたものの、9番川畑、1番清水を最後は自信の直球で仕留めた。

 聖望学園打線に対し「単打は仕方ない」と割り切って粘りの投球。それでも「(七回の)先頭の初球の入りが甘かった」と反省する。

 これで3試合連続完投と疲労もたまっているはずだが、「疲れなんか関係ない。私生活でも気を抜けない」と治療や温泉で体のケアを怠らない。それも全て甲子園の春夏連覇を意識しているから。「あすの試合も命懸けで臨む」と、まず全国切符を取ることに集中した。

◇選んだ道、正しさ証明 斎藤決勝三塁打

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【写真】9回表浦和学院2死二塁、右中間を破る決勝三塁打を放った斎藤がガッツポーズで声援に応える(埼玉新聞)

 迷いを捨てたフルスイングで均衡を破った。浦和学院・斎藤が放った鋭い打球は右中間を抜ける値千金の決勝適時三塁打。「しっかりと打つことができた。チームの勝利に貢献できた」と、三塁上で左拳を天高く突き上げた。

 二回に犠打を失敗し、四、七回の好機でも凡退といいところがなかった。汚名返上のチャンスはこれ以上ない場面。九回2死二塁。「良くても悪くても引きずったら駄目。目の前の打席に集中した」

 直球一本に狙い球を絞り「思い切り引っ張っていこう」と自分のスイングを貫いた。1球目の外角直球をファウル。「タイミングが合っていた。もしかしたらと思った」と森監督の予感が的中。真ん中低めに甘く入った直球を芯で捉えた。

 殊勲の一打を放った背番号11の地元は県西部の雄・聖望学園にほど近い入間。相手のスタメンには、中学時代に武蔵狭山ボーイズでともに練習した笠原、寺田、中村、高橋の4人が名を連ねていた。

 準決勝の前日、森監督から「ウラガクに来たことが間違いではなかったと証明しろ」とげきが飛んだ。「はい」と斎藤。グラウンドで最高の答えを出してみせた。

 帰途に就くバスへ移動する際、聖望学園ナインとその父母から「甲子園に行けよ」と思いを託された。「チャンスでは1球で仕留める。今から次が始まっている」。意気込む斎藤の瞳には、熱いものが込み上げていた。

◇浦和学院、接戦に応援加熱

 九回までもつれる1点勝負の接戦は、浦和学院の応援席をヒートアップさせた。

 この日は吹奏楽部やソングリーダー部のほか、生徒会役員約40人が結集。赤いTシャツに腕章姿で声を張り上げた。副会長の秋元輝昭さん(16)は汗だくになりながらも「甲子園で応援したので、体力勝負にも慣れてきた」と余裕を見せた。

 野球部応援団長の池ノ上大貴さん(18)は「焦りはなかった。こいつらならやってくれると信じていました」と選手たちとの一体感を強調した。

 春夏連続の甲子園切符を目指し、決勝は全校で応援する。

◇覚悟の苦戦

 会心の打球が右中間を越えていく。土壇場の九回、斎藤のタイムリー三塁打でもぎ取った虎の子の1点。苦しんで、苦しんで、それでも最後は勝つ。浦和学院が王者の野球を見せつけた。

 過去何度も激闘を繰り返してきた聖望学園と、土俵のど真ん中でがっぷり四つに組み合った。「こういうゲームは予測というか、覚悟していた」と森監督。スコアが動かない均衡状態が続いた。

 序盤はらしさを欠いた攻撃が目立った。四回まで毎回先頭打者を出しながら、3併殺に送りバント失敗と、再三の先制機を逃した。しかも二回途中からマウンドに上がった聖望学園のエース川畑には七回まで4四死球はあったが無安打に抑えられ、八回まで三塁を踏むことができなかった。

◇我慢の小島

 準々決勝の埼玉平成戦で史上3人目の完全試合を達成した小島は、我慢の投球だった。序盤のピンチをしのぐと、六回には2死から連打を浴びたが三振締め。続く七回は先頭に二塁打を許し、1死三塁と最大のピンチを迎えた。

 ここで次打者を二直に打ち取ると、続く打者の当たりは遊撃前へ大きく弾んだゴロだったが、竹村が「どんな打球にも食らい付く。1点もやらない」とピンチを防いだ。

 試合は1点勝負のシビアな戦いに。だが森監督はベンチで笑顔を見せる。「選手たちを信じるのみだった。ベンチから頼もしく見てました」。

◇斎藤、決勝打

 九回。森監督が動いた。川畑に対して、ここまでのスライダー狙いから一転、「直球を狙っていけ」と攻撃前に指示が飛ぶ。これがものの見事に的中した。

 先頭の山根が「合わせるのではなく、しっかりスイングした」と直球を左前に運ぶと、甲子園3ホーマーの主砲高田に送りバントさせる徹底した勝利への執念。そして迎えた2死二塁。斎藤が甘く入った直球を逃さず、右中間を真っ二つに割る三塁打で決着をつけた。

 準々決勝前、チームは「ここから決勝戦が3試合続く」(森監督)と引き締め直した。そして最大の難関を突破し、大会2連覇、4季連続甲子園出場へあと1勝に迫った。だが竹村は「勝った瞬間から気持ちはもう切り替わってます」。主将の山根も「決勝で負けたら意味がない。接戦の中で食らい付き、絶対勝ちます」。何ら変わらず、一戦必勝で川越東との最終決戦に挑む。

◇またも王者の厚い壁 聖望学園

 またも王者の厚い壁にはね返された。一昨年秋、昨夏、秋に続いて4度目の対戦も、九回に均衡を破られ0-1の惜敗。主将の吉田は「負けた実感がない。九回、持ちこたえられなかったのが自分たちの弱さ」と悔しがった。

 自慢の打線が浦和学院・小島に5安打完封された。「甘い球が来なかった」と岡本監督。それでも勝機はあった。最大の好機は七回。先頭の吉田が二塁打を放ち、犠打で1死三塁とした。

 ここでスクイズも想定されたが、岡本監督は「1点では勝てないし、ミスしたら残りのイニングがきつくなる」と強攻策を選択。しかし川畑は二直に倒れ、続く清水も遊ゴロに打ち取られた。

 小島を攻略できず、清水は「狙い通りの球が来ても、捉えることができなかった。回を追うごとにすごみが増していた」と脱帽した。

◇誇れる堂々の熱投 エース川畑

 息詰まるエース同士の投げ合い。たった一球の失投が勝敗を分けた。聖望学園の川畑は最後の最後で失点し、昨年決勝で敗れた王者浦和学院に雪辱は果たせなかった。

 川畑のスタミナを考え、右下手投げの長谷川を先発に起用した。しかし一回に2安打を浴び、二回に先頭の木暮に安打を許すと、岡本監督は川畑にスイッチ。大黒柱に試合を委ねた。

 「連投の疲れはなかった」と話す通り、二回を6球でピシャリと抑えると、その後は安定した投球を披露。三、四回には死球で走者を出したが、いずれも併殺で切り抜け、七回まで安打さえ許さなかった。七、八回には1死二塁のピンチを迎えたが、落ち着いた投球で無失点に抑えた。

 悔やまれるのは最終回、2死二塁の場面。斎藤への2球目の直球が甘く入った。右中間に運ばれた打球は痛恨の決勝三塁打。川畑は「力んだ」とうなだれ、岡本監督は「全部ボール球を投げろと指示したが、最初から敬遠するべきだった」と自らの采配を悔いた。

 今年も王者に敗れ、甲子園へ一歩届かなかった。試合後、川畑は「悔しい。浦和学院に勝ちたかった」と号泣。しかし、強力打線と堂々と渡り合った好投は胸を張っていい。

◇激痛に耐え全力プレー 聖望学園・寺田 

 5回戦と準々決勝で2試合連続本塁打を放った3番寺田は、浦和学院のエース小島を前に無安打に倒れた。

 三回2死、左肘に死球を受けて激痛が襲った。だが、ベンチに戻って岡本監督やナインから「頑張れ」「気にするな」と声を掛けられ奮起。その後の六、八回の打席は「平常心で立てた。痛いなどと言ってられなかった」と振り返る。

 あと一歩で甲子園の夢はついえたが「後輩たちには自分たちの分まで勝ち進んでほしい」と思いを託した。

◇浦学優位、鍵は先制点 決勝戦見どころ

 4季連続の甲子園出場を狙うAシード浦和学院と、昨秋4強で初優勝を懸けるCシード川越東が激突。夏の大会の対戦は1989年の第71回大会以来、24年ぶり。この時は2回戦で当たり、11-1で浦和学院が勝利した。今チームは初対戦。

 浦和学院・小島、川越東・高橋尚と両2年生左腕の先発が濃厚。ともに粘りと制球力が光るだけに打線が早めに援護したい。川越東は2番中村~5番正木が好調。下位で好機をつくり上位に託せば理想的。21回連続無失点中の小島の内角球をどう打つかもテーマだ。浦和学院は狙い球を絞った上で、高橋尚のチェンジアップを見極めたい。準決勝同様に6番斎藤がキーマンになりそう。

 経験、疲労度などから浦和学院の優位は動かない。川越東は前半は離されず、後半勝負に持ち込み勝機を見いだせるか。先制できれば面白い。

■準決勝(7月27日)

浦和学院
000000001=1
000000000=0
聖望学園

【浦】小島-西川
【聖】長谷川、川畑-岩本

▽三塁打 斎藤(浦)
▽二塁打 吉田(聖)

▽投手成績
小 島(浦)9回  、120球、被安打5、8奪三振、与四死球3、失点0、自責点0

長谷川(聖)1回0/3、 24球、被安打3、2奪三振、与四死球0、失点0、自責点0
川 畑(聖)7回3/3、 86球、被安打3、2奪三振、与四死球4、失点1、自責点1

【浦和学院】
⑥竹 村4-1-0
⑦服 部4-0-0
⑧山 根3-2-0
⑤高 田2-0-0
③木 暮2-1-0
⑨斎 藤4-1-1
②西 川4-0-0
①小 島3-1-0
④津 田1-0-0

【聖望学園】
⑧清 水4-0-0
⑨笠 原4-1-0
⑦寺 田2-0-0
⑤中 村4-1-0
③高 橋4-1-0
⑥田 畑3-1-0
④吉 田3-1-0
②岩 本3-0-0
①長谷川0-0-0
1川 畑3-0-0

(打数-安打-打点)

安 打:浦6、聖5
失 策:浦0、聖0
三 振:浦4、聖8
四死球:浦4、聖3
犠 打:浦3、聖2
盗 塁:浦0、聖0
併 殺:浦0、聖3
残 塁:浦6、聖8

 昨夏決勝の再現となった一戦は、投手戦の末に勝負強さを見せた浦和学院が聖望学園を退けた。九回、先頭の山根が左前打で出塁すると、2死二塁から6番斎藤が右中間を破る適時三塁打で決勝点をもぎ取った。バックも無失策の堅守でエース小島をもり立てて5安打完封。聖望学園は4回あった得点機で決定打を欠いた。二回途中から登板し、粘りを見せたエース川畑の好投も報われなかった。

(埼玉新聞)

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