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浦和学院、堅守キラリ 貫録の8強 大曲工(秋田)に5-1

◇浦学8強、Vへ加速 大曲工(秋田)に5-1

 第87回選抜高校野球大会第7日は27日、兵庫県西宮市の甲子園球場で2回戦3試合が行われ、一昨年覇者の浦和学院は、春夏通じて甲子園初出場の大曲工(秋田)に5-1で勝ち、準々決勝に進出した。攻守に粘り強さを発揮し、2年ぶり2度目の全国制覇へ勢いを加速させた。

3回裏浦和学院1死二、三塁、諏訪の適時打で二塁走者の江口(右)が逆転の生還。捕手鈴木平=27日、甲子園球場

3回裏浦和学院1死二、三塁、諏訪の適時打で二塁走者の江口(右)が逆転の生還。捕手鈴木平=27日、甲子園球場

 浦和学院は、1回戦で昨年優勝の龍谷大平安(京都)を3安打完封した左腕エース江口が先発。不安定な立ち上がりだったが、バックの好守で最少失点に抑えたことが勝利につながった。

 江口は一回1死から先制ソロ本塁打を浴びると、その後も2連打で1死一、二塁のピンチ。何とか後続を打ち取ったが、二、三回も先頭打者に安打を許すピンチの連続だった。だが、二回は送りバントに好反応した捕手西野が二塁へ好送球し併殺。三回は暴投、犠打で1死三塁とされたものの、空振り三振と、右翼手高橋が邪飛を好捕し無失点で切り抜けた。

 打線は三回、3連打で一気に逆転した。1死から西野の左前打、江口の二塁打で二、三塁とすると、諏訪が右前へしぶとく運ぶ2点タイムリー。続く臺が犠飛を放った。五回には荒木の三塁打を西野のタイムリーで追加点。八回にも津田の適時打で大勢を決めた。

 江口は10安打を許しながらも、味方の堅守に支えられ1失点完投。特にバッテリーを組む西野は強肩を生かし、盗塁を2度阻止し、エースを援護した。

 浦和学院の森士監督は「前半は押されっ放しで見ている方もひやひやしたが、よく守ってくれた。反省点はあるが、収穫も多かった」とナインをたたえ、逆転打を放った諏訪は「次の試合も大切な一戦。目の前に集中していきたい」と準々決勝への意気込みを口にした。

 浦和学院は29日の準々決勝第3試合で県岐阜商-近江(滋賀)の勝者と対戦する。

◇浦学、堅守キラリ 貫録の8強
3回表、大曲工・武田の邪飛を浦和学院の右翼手高橋が好捕

3回表、大曲工・武田の邪飛を浦和学院の右翼手高橋が好捕

 第7日は2回戦3試合が行われ、浦和学院、昨夏4強の敦賀気比(福井)静岡が50年ぶりに準々決勝に進出した。

 浦和学院は春夏通じて初出場の大曲工(秋田)に5-1で勝った。1点を追う三回に諏訪の2点適時打などで3点を奪い、そのまま逃げ切った。

 敦賀気比は明治神宮大会王者の仙台育英(宮城)を2-1で破った。五回に林中の適時打で2点を先制し、平沼が反撃を九回の1点に抑えた。敦賀気比は春夏通算20勝で、福井勢は春30勝目。

 静岡は4-2で木更津総合(千葉)を下した。四回に堀内、安本の連続適時打で逆転し、五、九回にも加点した。村木は毎回の14安打を許したが、完投した。

◇好守連発 流れ変える
4回表大曲工無死一塁、一塁走者の中邑の盗塁を阻止する浦和学院の二塁手臺

4回表大曲工無死一塁、一塁走者の中邑の盗塁を阻止する浦和学院の二塁手臺

 追う展開の中でもナインに焦りはなかった。2年ぶりの全国制覇へ突き進む浦和学院が、甲子園初出場初勝利で勢いに乗る大曲工に地力の差を見せ、8強入りを決めた。

 「相手打線の方が自分のリズムでバットを振れていた」と森監督。一回にソロ本塁打で先制を許し、二回から五回まで先頭打者を出塁させる嫌な流れが続いた。それでも追加点を与えず、勝利を手繰り寄せたのは無失策の堅守だった。

 二回無死一塁から犠打を捕球した捕手西野が迷いなく二塁へ送り、2-6-3の併殺を完成させた。三回2死三塁でも右翼手高橋が邪飛を懸命に追い掛け、滑り込みながらの好捕でチームの窮地を救った。

 四回無死一塁では再び西野が「走ってくる予感がした」と持ち前の強肩で盗塁を阻止。五回2死一、三塁のピンチは三塁手諏訪が冷静に打球を処理して後続を三ゴロに仕留めた。

 10安打を浴びながら1失点完投したエース左腕江口が「心強かった。野手が守ってくれると信じていた」と頼りにする野手陣の奮闘。8安打で5得点と打撃でも勝負どころを逃さなかった。

 試合前から指揮官が掲げていた「一瞬に気を張ってプレーする姿勢」をグラウンドで体現してみせたナイン。試合間隔の狭まる準々決勝以降へ、理想的な状態で臨むことができそうだ。

◇特大左犠飛で貴重な追加点 2番・臺

 三回1死三塁から特大の左犠飛で貴重な追加点をもぎ取った臺。逆転打を放った諏訪が敵失で三塁まで進んだ直後の初球を逃さず、「なんとか外野までもっていけた」と最低限の仕事を果たした責任感をにじませた。

 「全然踏み込めていない」と自身の打撃に満足していない。前チームでは中堅手として出場するなど器用さはチーム一。「テンポがよかった」という守備では二塁手として屋台骨を担う存在だ。「今までやってきたことを信じる」と表情を引き締めていた。

◇エース救う 強気の勝負 扇の要・西野
2回表大曲工無死一塁、守沢(右)の捕前バントを二塁へ送球する西野。併殺とする

2回表大曲工無死一塁、守沢(右)の捕前バントを二塁へ送球する西野。併殺とする

 2年ぶりの覇権を狙うチームには頼れる扇の要がいる。浦和学院の西野は、苦しむエースを助けるのが捕手の仕事だと言わんばかりに躍動した。

 一回、江口が内角球をたたかれ、いきなり本塁打を浴びた。「球が少し浮いていた」と言う。それでも内角を要求し続けた。「(球を)置きにいくと、のまれてしまう」からだ。強気のスタイルを変えなかったことで中盤から立ち直らせた。

 守備も光った。二回無死一塁でバントを素早く処理して併殺に。四回無死一塁では「いつでも来いと思っていた」と盗塁を刺した。江口は「リードも守りも本当に助かります」と恩に着ていた。

 三回に逆転の起点となる左前打を、五回は適時打も放った。西野は「次も浦学の試合をして、しっかり勝ちたい」と、少しはにかんだ。

◇積極姿勢前面に 逆転2点適時打 好調持続の1番諏訪
3回裏浦和学院1死二、三塁、諏訪が右前に逆転の2点適時打を放つ

3回裏浦和学院1死二、三塁、諏訪が右前に逆転の2点適時打を放つ

 1番諏訪の勢いが止まらない。三回1死二、三塁から「当たりはよかった。ピッチャーを助けることができた」と内角低めの直球を右前に運ぶ逆転の2点適時打。3安打を放った1回戦に続く活躍に「自分の中で楽しんでプレーできている」と目を輝かせた。

 自身の頭上を越えていった相手の先制弾に「始まったな」と心に火がついた。「振ってくる印象を与えたい」と強気の姿勢を貫く背番号5は「引いたら負け。どんな形でも積極的に行きたい」とリードオフマンとしての資質を備えている。

 趣味は小学5年のときに始めた陶芸。「イメージを形にする力が野球につながる」と何でも貪欲に取り入れる。中学時代に所属し、多くのプロ選手を輩出している加須シニアの網野監督も高い評価を惜しまない逸材だ。

 2学年上の選抜優勝左腕・小島の姿に憧れ、浦和学院の門をたたいた。怖いものなしの新2年生は「次も大事な一戦。目の前に集中して自分たちのプレーをしたい」。憧れ続けた聖地で、大先輩のようにチームをけん引している。

◇変化球狙い、見事に的中 津田

 八回に右翼線へダメ押しの適時二塁打を放った3番津田は「2球続けて変化を見逃し、来るのが分かっていた」と外角低めのスライダーを狙い打ち。森監督も「追い込まれながらよく打った」と主将の意地の見せた一打を手放しでたたえた。

 終盤までエース江口を援護できなかった1回戦の内容に誰よりも責任を感じていた。準々決勝に向け「江口も疲れてきて5点じゃ物足りない。きょうは軽いアウトも目立ったので、しっかり振って打撃の質を上げていきたい」と課題を挙げた。

◇味方の守りに感謝の江口

 浦和学院の江口は10安打を浴びながら粘りの投球で1点に抑えた。「野手が守ってくれたので最後まで投げられた」と無失策の味方に感謝しきりだった。

 一回、内角の直球を左翼ポール際に運ばれ先制を許したが、すぐに切り替えた。強気に内角を攻め続け、変化球を散らして要所を締めた。2試合で計268球を投げたエースは「少し疲れはあるけど、一戦一戦集中していきたい」と準々決勝を見据えた。

◇10安打を放つも指揮悔いる監督

 10安打した大曲工は一回の本塁打による1点のみ。1回戦で11回無失点だった浦和学院の江口を捉えてはいたが、阿部監督は「ただ打つだけに集中してしまったことが反省点。1点を取るしつこさを、もう少し表現するべきだった」と自らの指揮を悔いた。

 浦和学院とは昨秋に練習試合をして体格に圧倒されたという。先制本塁打の赤川は「冬に食事改善から取り組んだ成果で、スイングの速さは負けていなかった。夏に甲子園でもう一度やって勝ちたい」と3度目の対戦を願った。

◇特別な思いで声援 打撃投手寺門選手、両親は秋田出身
アルプススタンドで浦和学院を応援する秋田県出身の寺門修さん(右)と千鶴子さん夫妻=27日午後、甲子園球場

アルプススタンドで浦和学院を応援する秋田県出身の寺門修さん(右)と千鶴子さん夫妻=27日午後、甲子園球場

 第87回選抜高校野球大会第7日は27日、兵庫県西宮市の甲子園球場で2回戦3試合が行われ、第3試合に登場した浦和学院は甲子園初出場の大曲工(秋田)を5-1で破って8強入り。浦和学院野球部の一員でサポートメンバーとしてチームに帯同している寺門倫太郎選手(17)の父修さん(51)と母千鶴子さん(49)はともに秋田県出身。地元校との対戦を特別な思いで見守った。

 秋田市出身で石油会社に勤めている修さんは1993年に東京へ転勤。「秋田の同僚からも連絡があった。息子の学校と対戦しなければ、(大曲工を)応援していた」と両校の激突に胸を高鳴らせる。男鹿市出身の千鶴子さんも「複雑だけど心は一つ。みんなの力で勝ってほしい」と力の限り声援を送った。

 右投手の寺門選手は中学時代に東京・小平リトルシニアでエースとして活躍。「メンバーには入れなかったけどチームの目標は全国制覇。全力で投げたい」と打撃投手として連日200球を超える力投でチームの練習を下支え。26日の前日練習では、森士監督も「いい球を放っている」と評価していた。

サポートメンバーとして、選手の練習を手伝う寺門倫太郎選手

サポートメンバーとして、選手の練習を手伝う寺門倫太郎選手

 サッカー少年だった寺門選手は小学3年のとき、友人から学童野球へ誘われたことを機に野球にのめり込んだ。修さんが「秋田商に入るか」と秋田の強豪校への進学を勧めたこともあったが、「試合に出られるか分からないけど、浦和学院でやりたい」と寺門選手の決意は固かった。

 帰省の際には欠かさず両親の実家に足を運んだ。「じいちゃん、ばあちゃんが大好きな子」(修さん)という寺門選手は、一昨年に父方の祖父と母方の祖母が他界したとき、「甲子園を目指して頑張るから、天国から見ていてね」とメッセージを送った。

 修さんは「大曲工の打線も強力だったが、強固な守備で勝った。チームが一丸となって頑張ってくれた」とナインの勝利を笑顔で見届けた。

(埼玉新聞)

 試合結果
 2回戦 3月27日(甲子園球場)
TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 H E
大曲工 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 10 1
浦和学院 0 0 3 0 1 0 0 1 x 5 8 0
【浦】江口-西野【大】武田-鈴木平
▽本塁打:赤川(大)▽三塁打:荒木(浦)▽二塁打:江口、津田(浦)
 浦和学院打撃成績
位置 選手名 打数 安打 打点 打率
諏訪 4 1 2 .444
2 0 1 .167
津田 4 1 1 .222
山崎滉 3 0 0 .200
幸喜 3 1 0 .167
高橋 3 0 0 .000
荒木 3 1 0 .375
西野 3 2 1 .500
江口 3 2 0 .250
28 8 5 .269
 大曲工打撃成績
位置 選手名 打数 安打 打点 打率
佐々木駿 5 2 0 .556
赤川 3 1 1 .143
中野 4 2 0 .500
武田 4 1 0 .250
中邑 4 1 0 .250
堀江 3 0 0 .286
岡本 3 1 0 .143
守沢 4 1 0 .143
R 石井 0 0 0
鈴木平 2 0 0 .250
H 小田嶋 1 1 0 .000
33 10 1 .303
 投手成績
TEAM 選手名 球数 被安打 奪三振 四死球 失点/自責 防御率
浦和学院 江口 9 141 10 6 3 1 / 1 0.45
大曲工 武田 8 93 8 1 1 5 / 4 2.65
TEAM 三振 四死球 犠打 盗塁 暴投 失策 併殺 残塁
浦和学院 1 1 2 0 1 0 2 2
大曲工 6 3 1 0 1 1 2 9

 浦和学院は江口が一回にソロ本塁打を浴びたものの、二回以降はテンポよく投げて追撃を許さず、1失点で完投した。打線は三回1死二、三塁で諏訪が右前へ2点打を放って逆転し、諏訪も犠飛で生還。五、八回と少ないチャンスに加点した。

 大曲工は幸先よく先手を取ったが、その後は盗塁死などで好機が広がらなかった。

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